2021年3月2日火曜日

農家への直接支払交付金の真実

2021年1月27日 農水省の担当係より電話聞きとり調査の結果

 農業への交付金のことを検討していたら、今まで気がつかなかったいろんな問題が見えてきました。その問題を関東農政局、農水省、県の地域振興局、地元町役場などに問い合わせました。

畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)とは;(畑、水田のどちらも対象)
諸外国との生産条件の格差により不利がある国産農産物(麦、大豆等)について、引き続き生産コストと販売額の差に相当する額を直接交付。
生産コストには、直接経費はもちろん、事務局諸経費から土地に関わる税金、金利まで全てが含まれている。ということは、ゲタ対策交付金をもらえば、その時点で農家は経営上プラスマイナスゼロです。

水田活用の直接支払交付金(1) 戦略作物助成とは;
 米政策改革の定着に向け、食料自給率・自給力の向上に資する飼料用米、麦、大豆等の 戦略作物の本作化を計るため。(基幹作のみ対象)
 ここでは麦、大豆、飼料作物についてだけ論じます。
   麦、大豆、飼料作物の助成金 35,000円/10a  飼料作物には飼料用トウモロコシを含む

(考察)
 上記2つの説明と数値は農水省のホームページにあるものです。
 この説明通りだとしたら、一般の事業経営上の常識から判断すると、戦略作物助成金は農家の純利益に相当します。何故なら、ゲタ対策の説明にある通り、生産コストの不足分は直接交付されているからです。その観点から地元JAから頂いた2017年の麦、大豆の利益率を計算してみました。数値は、末尾に添付した地元JAから頂いた「水田転作の麦、大豆の営農状況」(2017年)からです。

   戦略作物助成/総収入(JAへの売上+ゲタ対策交付金+戦略作物助成)✖️100
 麦:  35,000円 / 79,550円  ✖️  100 = 0.44 = 44%
 大豆: 35,000円 / 100,510円    ✖️  100  = 0.35  = 35%

 この純利益は余りに大きすぎると思い、「何故でしょう?」と関東農政局に電話で質問しました。回答は以下の通りです。
「戦略作物助成金は、食用米を作っていたら得られるであろう利益です。今、食用米が一番儲かっているからです。ところが、現在食用米が生産過剰で困っています。そこで、農家に転作を勧めているが、損になればやってもらえないので、食用米を作っていたら得られるであろう利益を上乗せするという考えです」

 理論上は、35,000円/10aが米の利益に相当することになりますので、米の純利益率を概算してみました。現在の食用米の価格は約15,000円/60kg・俵 ですから、10a当り10俵平均とすると、次のようになります。
 35,000円/10a  / 10俵 ✖️ 15,000円/俵 ✖️ 100 = 0.23 = 23%

これは理論上純利益です。産業別利益率ランキングの2020年度データを見ると(下にURL)、トップは消費者金融で16.0%、ソフトウェア15.8%、クレジットカード12.8%と続きますが、工業、建設、商業、電子部品などの実業部門はほとんどが5%以下です。
国民の税金から助成している農業・農家の利益をここまで上げる必要があるのでしょうか?補助金・交付金を無条件に悪いなどというつもりはありません。本当に必要であれば使うべきです。しかし、米作りに23%という純利益率は必要でしょうか?地元JAの麦作の利益率は44%、大豆は35%です。
この累積が毎年約3,000億円の米価維持のための予算になっています。これが、安倍首相が「米を
自由化した」と大見得を切ったフェイクニュースの真実です。

改めて、農水省関東農政局にお尋ねしました。
「理由は判りますが、こんなに高い利益率を与える必要があるのでしょうか?」
 「これは政策で決まっていることですから、私には判りませんから、ご意見は上に伝えます」
 「あなたはこのような状況をどうお考えですか?」
 「政策で決まっていることなので、考えたことはないので判りません」

 今まで、何度か農水省、農政局にお尋ねしたことがありますが、まともな返事がいただけた試しがありません。彼らは農水省にいても農政のことを全く知らないのです。決まって、「調べてご返事します」となり、その上、返ってくる答えがほとんど的外れです。

 まとめます。下記の真実です。
 農家の生産費は、畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)によってプラスマイナスゼロになっている。
 したがって、水田活用の直接支払交付金である戦略作物助成金は、純利益に当たる。
 今まで、この問題について地方・国を合わせて5名にお尋ねしましたが、このことを考えたことのある役人はゼロでした。

 但し、現実は、これだけ助成してもらっても、ちゃんと経営している農家は別ですが、兼業・零細農家は赤字だと思います。それは交付金が足りないのではなく経営形態が劣悪だからです。そこにまで税金を使うことにこそ問題があります。この解決は農家自身の問題であり、この形態を温存させてきた政治にこそ問題があると思います。財務省を初めてする主要省庁の事務次官をほぼ独占している東大O Bは本当に優秀なのでしょうか。

 それでは一体、戦略作物助成金の実態は何でしょう。落ち着いて考えてみると、零細農家の生活扶助金ではないでしょうか?一方において、まともに経営している大規模農家にとっては利益が出て笑いが止まらないのではないでしょうか。これはニュースにはなりませんが。

 ところが、困った実態があります。山下一仁氏が「農家はもはや弱者ではない」(2020年1月)に次のように書いています。

<・・昭和30年代に東京などの大都市に移動してきた人たちは、変わる前の農業や農村しか知らない。変わる前の農村では、貧しく過酷な労働を強いられる農家が多数を占めていた。田植え機が普及するまでの田植えは大変な重労働だった。教科書でもこのイメージが語られ、"おしん"などのドラマが、これを強固なものにする。
・・しかし、日本の農業や農村は昭和40年代以降、劇的に変化した。
・・民間の平均年収は2017年432万円、2018年441万円である。
・・TPPや日米交渉対策の対象となる農家の所得はどうだろうか? 
 右の図が示す通り、肉牛8百万円超、酪農1千7百万円、養豚2千万円である。(なお、図の農外所得とは、サラリーマン所得などを指している。この図から、米作農業のほとんどは、サラリーマン所得が主の兼業農家や高齢な年金生活者によって行われていることがわかる)
・・1965年以降農家所得はサラリーマン世帯の所得を上回って推移している。農村から貧困はなくなった。>

あなたの知らない農村~養豚農家は所得2千万円!
https://cigs.canon/article/20200115_6175.html

業界別 利益率ランキング(2020年版)
https://gyokai-search.com/5-riritu.html

水田活用の直接支払交付金
https://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/soukatu/attach/pdf/mr-240.pdf

令和2年から4年産の 畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)の 交付単価が変わります。
https://www.maff.go.jp/hokuriku/keiei/keiei_antei/attach/pdf/index-22.pdf

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


0 件のコメント:

コメントを投稿