2021年4月21日水曜日

山下一仁の林業政策改革

 キャノングローバル戦略研究所(CIGS)山下一仁氏の提言を掲載します。

🔹 2021年9月7日 国産材生産増加が山を裸にする 〜日本林業の深刻な課題~
山林経営者の収益を低下させ続ける林野庁の支援

🔹 2021年9月7日 国産材生産増加が山を裸にする 〜日本林業の深刻な課題~  山林経営者の収益を低下させ続ける林野庁の支援 | キヤノングローバル戦略研究所 (cigs.canon)

🔹 2021.0330 【政策提言】林業政策の改革(その3) | キヤノングローバル戦略研究所 (cigs.canon)
・将来世代に森林資源を引き継ぐためには、森林所有者に対する

  “直接支払い”を導入し、近自然的林業を目指すべきである。

🔹 2021.0322 【政策提言】林業政策の改革(その2) | キヤノングローバル戦略研究所 (cigs.canon)
 ・丸太価格や立木価格が低下しているのに、なぜ製品価格は低下しない?

🔹 2021.0205 【政策提言】林業政策の改革(その1) | キヤノングローバル戦略研究所 (cigs.canon)
 ・2024年度から一人千円の森林環境税が徴収される。

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2021年4月11日日曜日

なぜ日本の官僚は政治家に「忖度」するのか?

DIAMOND online 2021.4.6 4:05 より。 
なぜ日本の官僚は政治家に「忖度」するのか?世界でも特異な制度の問題 https://diamond.jp/articles/-/267573  
上久保誠人:立命館大学政策科学部教授  

とても判りやすい記事だったのでコピーさせて頂きました。
東大法学部のエリート集団は、この改革を目標にするべきだと思います。
東大OBが政権を取れば実現しますよね! 

なぜ、改革の狼煙が上がらないのでしょうか?
これも忖度でしょうか?

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 このところ、さまざまな不祥事が取りざたされている霞が関だが、官僚が自民党政権に「忖度」しているせいだといわれている。忖度の理由は、首相官邸が官僚組織の人事権を掌握しているからだ…という声もあるが、人事権の掌握自体は、世界的に見ても珍しいことではない。日本の問題はもっと根深い。日本だけが「忖度」する官僚になったのはなぜなのか。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

 日本の政治と官僚の「忖度」関係は、世界的にも特殊  
霞が関の官僚の不祥事が続いている。首相官邸が、官僚組織の人事権を強力に掌握したことで、官僚が政治に「忖度」するようになりモラルが低下したという。若手官僚の大量離職や、官僚志望の学生の激減など、霞が関では人材難もささやかれるようになった。  だが、世界的に見て、首相官邸や大統領府が官僚組織の人事権を掌握すること自体は、珍しいことではない(第183回)。  しかし、それらの国で官僚の政治への「忖度」が問題になることはない。  ということは、つまり、首相官邸が強力な人事権を持つこと自体が問題なのではない。それが、官僚の「忖度」を生むのは、何か別の要因があるのだと考えられる。  日本の政治と官僚の関係が、世界的に見て「特殊」である理由の一つは、「自民党長期政権」にある。1955年に自民党が政権の座に就いてから66年のうち、政権から離れたのは、細川護熙・羽田孜の非自民政権と民主党政権の合計4年2カ月だけである。  この長期政権が、世界と比較してみても、特異な政治的関係を作り上げた。

自民党と霞が関が一体化
中学高校のつながり、年功序列の出世…

 政権交代がほとんどないことで、自民党と霞が関の間は、制度的に一体化した。

 省庁は、法案を作成すると、まず自民党政調会部会にそれを持ち込む。部会はそれを審査し、自民党を訪れるさまざまな業界と族議員が「利害の調整」をする「与党事前審査」が行われる。法案は、部会で修正された後に、内閣で「閣議決定」されて、国会に提出される。この流れは、世界の議会制民主主義国で、日本だけの独特な制度である。

 さらに、人事制度でも二者はつながっている。例えば、官僚は、省庁別に採用されて、年功序列・終身雇用の「日本型雇用制度」でキャリアを形成していく。

 一方、自民党も長期政権の間に、当選2、3回目で政務官、5回目程度で副大臣、7、8回で初入閣、その後主要閣僚・党役員を歴任していくといった、当選回数を基準とした「年功序列」の人事制度を確立させている。この制度の下で、自民党の族議員と官僚はともに出世していく「同士」の関係性を持つのだ。

 また、自民党に世襲議員が多いことが、官僚との個人的な関係性をより濃密なものにする。世襲議員は、選挙区が地方でも東京の中学・高校を卒業している人が多い。例えば、橋本龍太郎氏、福田康夫氏、谷垣禎一氏、与謝野馨氏らは麻布高校出身、岸田文雄氏は開成高校出身だ。一方、霞が関の側も、麻布高校、開成高校、筑波大附属駒場高校など、東京の中高一貫校の出身者が多い。

 彼らには、中学・高校の先輩後輩というより深い関係がある。例えば、開成高校出身者は、国会議員と官僚の総勢約600人で「永霞会(永田町・霞が関開成会)」を結成している。このような、自民党と霞が関の業務を超えて一体化した関係性が、官僚の不祥事の背景にある。

同じ議院内閣制の英国では「同窓会」禁止
官僚はどの政党とも一定の距離を保つ

 しかし、同じ議院内閣制を採用している英国では、このような関係性が生じない制度的仕掛けがある。英国政治は「交代可能な独裁」と呼ばれ、(第72回・p5)、首相に強力な権限が付与されているが、政権運営・政策を失敗したら、国民によって選挙で交代させられる。

 政権交代が頻繁に起こるので、官僚は特定の政党と業務を超えた深い関係を結ぼうとしない。政権交代の時に、前政権との関係性を責められて、左遷させられてしまうからだ。リスク回避のために、英国の官僚は特定の政党・政治家と深い関係を結ぼうとしないのだ。 

 そもそも、官僚が同じ役所の大臣、副大臣、政務官以外の政治家と接触することを禁止する法律がある。政治家、官僚ともにオックスフォード大、ケンブリッジ大などの出身者が多いのだが、「同窓会」自体が禁止されている。

 さらに、「ダグラス・ヒューム・ルール」と呼ばれる、総選挙の前に省庁が野党に政権構想をヒアリングして、政権交代が起きた後に、スムーズに政策転換できるように準備をする慣行がある(第37回・p3)。このように、英国では官僚組織がどの政党からも一定の距離を保ち、中立の立場であるよう制度的な工夫があるのだ。

「日本型雇用制度」が問題の根源?
他国では起き得ない忖度

 次に、新卒一括採用、年功序列・終身雇用の「日本型雇用制度」が、官僚の「忖度」を生んでいるという問題がある(第183回)。

 要するに、官僚の「忖度」は、「日本型雇用制度」で、首相の機嫌を害して左遷されてしまうと、二度と出世コースに戻れないために起こるということだ。日本の場合、それが退官後の第二の人生である「天下り」にまで影響するので、深刻である。

 一方、これは米国、英国など欧米のみならず、アジア諸国などの官僚組織でも起き得ないのだ。官僚組織が年功序列・終身雇用を採用していないからだ。

 中国や東南アジアなどの官僚組織から、私の勤務校に派遣されている留学生に聞くと、日本の「国家公務員総合職」に相当する資格はあるが、官僚はさまざまな省庁を移籍しながら、キャリアアップしていくのだという。日本の年功序列・終身雇用は世界的に極めて特殊な制度なのである。

 年功序列・終身雇用がなければ、キャリアアップのために、政治家や官僚組織の上司に「忖度」する必要はない。官僚は業績のみで判断されるので、移籍すれば、キャリアとしては問題ない。

 また、英国などでは、人事は「公募」で行われるのが一般的だ。組織内で内部昇格をさせたい場合でも、外部に「公募」し、外部と内部の人材を公平に評価する。内部昇格させる場合、能力、業績的に妥当だと結果を「公開」するのだ。上司と部下の「特別な関係」で昇格することを防ぐ制度的な仕掛けがある。

国家公務員総合職試験合格の有効期限をなくして、
官僚の流動化を!

 従って、日本で官僚の「忖度」をなくす一つの方策として、「日本型雇用」の慣行の改革が考えられる。

 もちろん、日本社会に定着し、国民の支持もいまだに高いこの制度をいきなり廃止するのは現実的ではない。中途採用のポジションを増やし、民間企業などとの人材交流を活発化させることだろう。

 そこで、私は国家公務員総合職試験合格の有効期限を、現行の3年から「無期限」に変える改革を提案したい。

 例えば、国家公務員総合職に合格しながら、省庁訪問で採用されなかった人材が毎年相当数いる。彼らは民間企業などに就職し、3年後には資格が消滅する。

 実は、私のゼミでは3年連続4人の学生が国家公務員総合職に合格したが、1人も省庁訪問で採用されなかった。知人である官僚に聞くと、一般論として答えてくれたのが、「東大、京大、早慶などでないと、採用するには上司に対して書類で3倍、口頭で10倍の説明が必要だ」ということだった。

 霞が関に採用される東大生は減少しているが、いまだに他大学から採用されるのは狭き門だ。しかし、一方で若手官僚の離職者が増えているという。国家公務員総合職の資格を一度は得ながら、3年後に資格が消滅している人材が民間に多数いるのは、もったいないではないか。

 そもそも国家公務員総合職の資格に有効期限があるのは、新卒一括採用、年功序列、終身雇用を前提としているからだ。中途採用を増やして優秀な人材を確保するには、多くの有資格者がいるほうがいい。

本連載の著者、上久保誠人氏の単著本が発売されています。『逆説の地政学:「常識」と「非常識」が逆転した国際政治を英国が真ん中の世界地図で読み解く』(晃洋書房)

 逆にいえば、資格に有効期限があって有資格者が少ないために、中途のキャリア官僚が採用できず、柔軟な官僚組織の編成ができないという悪循環になっている。中途採用を目指す人にとっても、キャリアで採用されないなら魅力がない。

 過去に国家公務員総合職試験に合格した人の資格を復活させて、新規の合格者とともに終身の資格とする。そして、政策課題に合わせて省庁の編成を柔軟に行い、彼らを採用する。官僚は、政策立案の「業績」を引っ提げて、さまざまな省庁や民間企業を渡り歩き、キャリアアップを目指す。これが、官僚の政治への「忖度」をなくすために、必要な改革ではないだろうか。





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