2021年2月28日日曜日

信州大学山沢清人学長 崇高で感動の「入学式挨拶」

当NPOの石田聖(ひさし)理事は信州大学で学びました。
「信州大学で学んだことを誇りに思います」と語り、
平成27年度入学式における山沢清人学長の挨拶文を送って下さいました。
感動的な文章なので、転載させて頂きました。
 
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信州大学 入学式 学長挨拶
信州大学長 山沢清人
平成27年4月4日(原文のまま)

 本日ここに、平成二十七年度信州大学入学式を開催できますことは大きな慶びでございます。関係の皆様に深く感謝を申し上げます。
 新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。信州大学は全学を挙げて皆様を歓迎いたします。そして、ご両親、ご家族の方々に心からお慶びを申し上げます。おめでとうございます。
 皆様が本日入学式を迎えることができましたのは、厳しい受験勉強を克服された努力の結果であります。と同時に、励まし頂いたご家族、ご友人そしてご指導頂いた先生はじめ多くの方々のお陰だということを改めて深く胸に刻み、感謝の気持ちをいつまでも持ち続けてください。
 そして、留学生の皆様は母国を離れ、言葉、文化、生活習慣の異なる信州のこの地に生活することになりました。初志を貫徹され、四年後に大きな成果を挙げられることを期待しております。
 また、信州大学大学院にご入学された皆様にも、心からお祝いを申し上げます。おめでとうございます。最高学府である大学院の入学式に臨まれて、決意を新たにされていることと存じます。今の新鮮な知的高揚感を決して忘れることなく、大学院での学びと研究を続けて頂きたいと存じます。

 ところで、新入生の皆様は、本日、大学受験から解き放たれたことになりましたが、もう勉強はしなくて良いなどとは考えていませんよね。
 今までは、皆様は正解のある問題を解くことに終始していました。知識の量を試されていました。世の中では、正解のない問題を解かなければなりません。誰も考えたことのないことを考えるという、知識の質を問われることになります。さらに、世界の状況は変化が大きく、スピードも速く、ICTの進歩で一気にグローバル化します。
 大学院入学生にも、是非聞いて頂きたいのですが、日本が今後とも活力ある社会を維持し、世界へ積極的に貢献していくためには、科学、技術、文化のいずれの分野でも独創性や個性を発揮することが重要となります。横並びの発想では問題を解決できません。

 皆様は、もしかしたら、個性の発掘に没頭する「自分探し」をしませんでしたか。また、これからしようと思っていないですよね。若い時の自分探しは勧められません。特に、解剖学者の養老孟司さんは、「個性は徹底的に真似をすることから生まれる」とまでおっしゃられています。伝統芸能の世界に見られる、師匠と弟子の個性の違いを指摘されてのことです。
 個性を発揮するとは、なにか特別なことをするのではなく、問題や課題に対して、常に「自分で考えること」を習慣づける、決して「考えること」から逃げないことです。自分で考えると他人と違う考えになることが多くなり、個性が出てきます、豊かで創造的な発想となります。
 学生で言うと、普段の勉強を真剣に取組むこと、そして身につける「知識の量」を主とするのではなく、「知識の質」すなわち自ら探求的に考える能力を育てることが大切となります。

 ところで、信州大学の学生は独創性が豊かなのでしょうか。ここに興味あるデータがあります。昨年六月の日本経済新聞の調査結果です。上場企業四三三社の人事担当者から見た「大学のイメージ」調査です。「対人力」、「知力・学力」、「独創性」などについてのランキング結果です。
 信州大学は、京都大学を抑えて、「独創性」項目で第一位です。この「独創性」の判断は「創造力がある」と「個性がある」という質問で行っているようです。
 一言付け加えておきますが、信州大学は、「知力・学力」の項目でも、高位にありました。「単に変わった人間が多い」ということでは決してありません。
 就職されている先輩諸氏は、「独創性」が高いという社会的評価です。皆様もそうでしょうか。卒業すると、そうなるのでしょうか。私は違うと思います。受験勉強と同じ気持ちでは駄目です。大学での勉強と生活の仕方を変えなければなりません。

 その理由をお話しましょう。創造性を育てるうえで、特に、心がけなければならないことは、時間的、心理的な「ゆとり」を持つこと、ものごとにとらわれ過ぎないこと、豊か過ぎないこと、飽食でないことなどが挙げられます。
 自らで考えることにじっくり時間をかけること、そして時間的にも心理的にもゆったりとすることが最も大切となります。
 子供の頃をちょっと思い出して下さい。子供の頃は、例えば、夏休みがゆっくり過ぎていたと感じませんか。大人になると、忙しさで、時間は走馬灯のように速く過ぎていきます。脳科学者のDavid Eagleman(デイウィッド イーグルマン)さんは「記憶が詳細なほど、その瞬間は長く感じられる。しかし、周りの世界が見慣れたものになってくると、脳が取り込む情報量は少なくて済み、時間が速く過ぎ去っていくように感じられる」と言っています。

 自分の時間を有効に使うために、自力で時の流れを遅くする必要があります。
 そのために五つの方策が提案されていることは良く知られています。
 一、学び続けること。新しい経験が得られて、時間感覚がゆっくりとなる。
 二、新しい場所を訪ねる。定期的に新しい環境に脳をさらす。
 三、新しい人に会う。他人とのコミュニケーションは脳を刺激する。
 四、新しいことを始める。新しい活動への挑戦。
 五、感動を多くする。

 信州大学では、自然に囲まれた緑豊かなキャンパスでの勉学と課外活動、都会の喧騒とは無縁の落ち着いた生活空間、モノやサービスなどが溢れることのない地に足の着いた社会など、知的にものごとを考え、創造的な思考を育てる環境を簡単に手に入れることができます。先輩諸氏は、このようにして、ゆっくりとした時間の流れを作っていたのです。
 皆様はどうでしょうか。残念なことですが、昨今、この信州でもモノやサービスが溢れ始めました。その代表例は、携帯電話です。アニメやゲームなどいくらでも無為に時間を潰せる機会が増えています。スマホ依存症は知性、個性、独創性にとって毒以外の何物でもありません。スマホの「見慣れた世界」にいると、脳の取り込み情報は低下し、時間が速く過ぎ去ってしまいます。
 「スマホやめますか、それとも信大生やめますか」 スイッチを切って、本を読みましょう。友達と話をしましょう。そして、自分で考えることを習慣づけましょう。自分の持つ知識を総動員して、ものごとを根本から考え、全力で行動することが、独創性豊かな信大生を育てます。

 最後にご紹介したいことがございます。本日の入学式では二つの歌を皆様と一緒に歌うことになっています。一つは信州大学の前身の一つである旧制松本高等学校の思誠寮寮歌「春寂寥」です。大正九年に吉田実さん(作詞)と濱徳太郎さん(作曲)の二人の学生によって作られました。
 旧制松本高等学校は、大正八年(一九一九年)に開校され、その後信州大学の発足にあたりその母体の一つとなり、文理学部に改組されて昭和二十五年(一九五〇年)には閉校となりました。
 文科と理科の専攻に分かれての勉強ですが、授業時間の四割が外国語、文科でも数学と自然科学が週五時間ほど課せられ、また理科でも国語及び漢文が週四時間ほど課せられる、文理の差が非常に少ないカリキュラムでありました。
 ほとんどの生徒は思誠寮での寄宿生活であり、寮生活を通して、切磋琢磨により、自らの生き方を見出すという恵まれた時間をつくることができたと言われています。まさに独創性が育まれたということです。作家の北杜夫さん、辻邦生さん、病理学者の飯島宗一さん、日本人として初めて南極点に到達した南極観測隊々長の村山雅美(まさよし)さんなど各界で著名な方々が多くいらっしゃいます。

 もう一つの歌は、信州大学学生歌「叡智みなぎる」です。昭和三十五年に文理学部宮坂敏夫さん(作詞)と工学部羽毛田憲一さん(作曲)の二人の学生によって作られました。文理学部同窓会誌に、宮坂敏夫さんが書かれた「作詞の経緯」によりますと、信州大学学生部が六十年安保闘争のデモに明けくれる学生の実態を見て、学内に潤いが欲しいと思って、学生歌の募集を始めたのではないかとあります。なお、宮坂敏夫さんは、現在俳人としてご活躍でいらっしゃいます。この「叡智みなぎる」の学生歌ができた頃の学生達は、自らの勉学時間を削ってでも、日本の国の在り方と国の行く末を案じるという、熱い情熱を持って学んでいたのです。
 また、この二つの歌はいずれも、松本在住の音楽家丸山嘉夫さんによって、見事に編曲され、若者たちの「青春の歌」として蘇っていることを付け加えておきます。

 皆様は、一日も早く新しい生活環境に慣れ、心身ともに健全に保ち、勉学に励み、目標に向かって進んでください。大学生時代は、長い人生の中でもかけがえのない大切な時期であります。充実した楽しい大学生活を過ごされることを期待しています。
 そして、大学院に入学した皆様は、自らの高い問題意識と積極的な取り組みによって、初めて真理が探究でき、新しい知の創造の喜びが生まれ、社会に貢献できることを肝に命じてください。
 学術研究の将来を担うのは皆様です。信州大学の学術研究は皆様の肩にかかっています。高い志と熱い情熱を持ち続けてください。そのことによって、日本の明るい未来が開けるものと確信しております。

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2021年2月24日水曜日

異常な米政策を解明する!


 2021年2月 衆議院予算委員会(令和3年度総予算)において
キャノングローバル戦略研究所(CIGS)の山下一仁氏の農業政策提言の
報告資料が2/18のメルマガに配信されました。持論が展開されています。

余剰水田の活用の仕方においては、山下氏は輸出用米の生産を主張し、
「スマート・テロワール」では畑地への転換を主張していて違いますが、
戦後から現在に致る農業政策の過ちの指摘においては
「スマート・テロワール」と同様です。資料のPDFを添付します。

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            アンシャン・レジーム=旧体制
編者註]
米政策と農協が政治と密接につながっているために、国民のための
農政ではなく、農家=一票のための農政になってしまった。
[編者註]
水田転作奨励金は減反政策であり、安倍首相が2019年に「米を自由化した」を発表したのはフェイクニュースだと主張しています。事実その通りです。下記URLからその解説を読むことができます。

[編者註]
田畑輪換(水田で米以外の穀物を生産させる政策)のために
3000億円〜4000億円の税金を使っている。その上、米価を吊り上げているので、国民は高い米を食べさせられている。その金額が6000億円になっている。欧米がやっているような農家直接支払い政策に転換すれば、約1兆円の国民負担が大きく減らせると主張しています。
私もその通りだと思います。
編者註]
「スマート・テロワール」の仲間である岩手県花巻市の農家では
米は、乾田直播により、60kg当り6,587円で生産できています。
トウモロコシ、麦、大豆の輪作を畑作の技術・機械体系で行っています。
機械・設備が共通利用できるのでコストが下がります。




[編者註]
P S Eとは:《producer subsidy equivalent》生産者補助金相当額。農業保護政策には大別して価格支持と政府補助金の2 種類があるが、共に生産者へ金銭的「移転」(monetary transfer)をもたらして生産を刺激する、という意味では同じなので、この 2つの移転額を合計しPSE という単一指標で表した。(移転=補助)
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2021年2月23日火曜日

日本とフランスの農地政策の違い:なぜ、零細なのか?

日本とフランスの農地政策の違いがわかります。

国民のための食料政策という観点からではなく、
農家の保護という部分的な観点からなされた戦後農業政策の結果といえる。

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農協改革・農地改革をどう進めるべきか

キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 山下一仁 氏

2016/10/18

ゾーニングの不徹底による規模拡大の阻害

 土地には強い外部性が存在すると言われる。まとまりのある農地の中に建物ができると、機械や水の利用が非効率となったり、施肥、農薬散布、家畜飼養などをめぐる他の住民とのトラブルが発生したりするなど、農業生産のコストが増大してしまう。また、農地が耕作放棄されて草木が繁茂すると病虫被害が生じる。高い建物ができると隣の農地は日陰地となる。他方で、農地の中に住宅などが建つと、道路、下水道、学校などの社会資本を効率的・集中的に整備できなくなってしまう。

 このため、ヨーロッパでは、土地の都市的利用と農業的利用を明確に区別するゾーニングが確立している。他産業の成長が農村地域からの人口流出をもたらしたので、自動的に1戸当たりの農地面積は増加した。わが国でも「都市計画法」で市街化区域と市街化調整区域が区分され、「農業振興地域の整備に関する法律」(農振法)により指定された“農用地区域”では、転用が認められないことになっている。しかし、これらのゾーニング規制は十分に運用されなかった。

 都市近郊農家は、農地転用が容易な市街化区域内へ自らの農地が線引きされることを望んだ。農振法の農用地区域の見直しは、5年に一度が原則である。しかし、農家から転用計画が出されると、毎年のように見直される結果、農用地区域の指定は容易に解除される。農用地区域の指定を任されている市町村長としては、農地を宅地や工業用地にしたほうが地域振興に役立つ。また、選挙民が転用したいと言ってくると、拒否できない。

 ゾーニング規制が十分でないと農家は転用期待を持つし、農地価格は宅地価格と連動して高くなる。この結果、農地の売買による規模拡大は行われなくなった。農林水産省も、これに真剣に取り組もうとしなかった。

 農地法の「転用規制」も真剣に運用されなかった。特に、平坦で区画が整理されている平場の優良農地こそ宅地などに転用されやすい。減反政策が実施されて以降は、米が余っているのになぜ転用させないのかという政治的圧力が高まった。食料安全保障の観点からは、現在の農地面積だけでは日本の人口を養えない。水田が余っているのではない。高米価のために米が余っているだけなのである。

 転用許可には裁量の余地が大きい。それを判断する農業委員会は主として農業者により構成されているため、いずれ自分も転用するのだと思うと、身内の転用申請に甘い判断を下しがちである。加えて、農地法に違反して転用された案件でもほとんどの場合、事後的に転用許可が下される。また、将来の転用を見込んで農家が開発業者などと農地の売買契約を結び、開発業者などの名義で仮登記を行うケースも出ている。

 わが国で規模が拡大しないのは二つの原因がある。第一に、ゾーニング規制が甘いので、簡単に農地を宅地に転用できる。農地を貸していると、売ってくれと言う人が出てきたときにすぐには返してもらえない。それなら耕作放棄しても農地を手元に持っていたほうが得になる。耕作放棄しても固定資産税はほとんどかからない。耕作放棄してもペナルティはないのである。第二に、減反政策で米価を高く維持しているため、コストの高い農家も農業を続ける。以上から、主業農家が農地を借りようとしても、農地は出てこない。つまり、農地のゾーニング徹底と減反廃止という政策を実行しない限り、農地を集約することは困難である。

 これに対して1960年に農業基本法を作ったフランスでは、ゾーニングにより都市型地域と農業地域を明確に区分し農地資源を確保するとともに、農政の対象を、所得の半分を農業から得て、かつ労働の半分を農業に投下する主業農家に限定し、農地をこれに積極的に集積した。また、土地整備農村建設会社(SAFER)が創設され、先買権(買いたい土地は必ず買うことができ、その価格も裁判により下げさせられる)の行使による農地の取得および担い手農家への譲渡、分散している農地を農家の間で交換して1ヵ所にまとめて農地を集積する(日本では、“交換分合”と呼んでいる)などの政策が推進された。1960年から2013年にかけて食料自給率は99%から129%へと上昇し、農場規模は17ヘクタールから2010年には53ヘクタールへと拡大した。

 食料安全保障の見地から農地資源を確保するためにもゾーニングを徹底すべきだ。その上で企業形態の参入を禁止し農業後継者の出現を妨げている農地法を廃止すべきである。これがシンプルな農地改革である。

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山下一仁 著 『TPPが日本農業を強くする』(日本経済新聞出版社、2016年)「第4章 限界にきた日本の農業」から

山下 一仁(やました かずひと)
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹、経済産業研究所上席研究員。1955年山梨県生まれ。1977年東京大学法学部卒業。農水省(現農林水産省)入省。農林水産省ガット室長、(在ベルギー)EU日本政府代表部参事官、食糧庁総務課長、国際部参事官、農村振興局次長などを歴任。1982年ミシガン大学行政学修士、同大学応用経済学修士。2002年OECD農業委員会副議長。2005年東京大学農学部博士号取得。2008年農林水産省退官。専門は、食料・農業改革、地域振興政策、農業と貿易交渉、環境と貿易。食品の安全と貿易など。主な著書:『国民と消費者重視の農政改革』(東洋経済新報社2004年)、『食の安全と貿易』(日本評論社、2008年)、『農協の大罪』(宝島社新書、2009年)、『「亡国農政」の終焉』(ベスト新書、2009年)、『農業ビッグバンの経済学』(日本経済新聞出版社、2010年)、『環境と貿易』(日本評論社、2011年)、『農協の陰謀』(宝島社新書、2011年)、『日本の農業を破壊したのは誰か』(講談社、2012年)、『農協解体』(宝島社、2014年)、『日本の農業は世界に勝てる』(日本経済新聞出版社、2015年)など。

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2021年2月11日木曜日

たてしなップル の スマート・テロワール

2020年10月24日、認定NPO法人信州まちづくり研究会主催の
「東信STオンライン研究会」において、
たてしなップル総支配人小宮山尚明さんの講演のパワーポイントからです。

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たてしなップル ホームページ
https://tateshinapple.jp/

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2021年2月10日水曜日

上野牧場のスマート・テロワール

上野牧場のスマート・テロワール

牧場の正式名称は、「新利根協同農学塾農場」
その3代目当主上野裕(ゆたか)さんのお話です。


月間『農業経営者』2015年2月号に上野裕さんのことが
紹介されました。題名は、
「孫として受け継ぐ誇りと夢と葛藤、上野満という希有の農業指導者の子」
その巻頭言をご紹介致します。

『農民は貧しく︑日本人が飢えに怯えていた時代に上野満という農村リーダーがいた。満は、満州開拓団の団長を経て徴兵、敗戦を迎え、その後シベリアに抑留される。終戦2年後の1947年に帰国すると故郷の福岡には戻らず、現在の茨城県稲敷市市崎に戸の農家による協同農場、新平須協同農場を組織する。満州開拓団時代の満を尊敬し、その協同農業の理論に心酔する若者たちが集まっての協同農場の発足だった。年代後半に協同農場は崩壊したが、満の人間としての理想と誇りは長男の達(いたる75才)、孫の裕(ゆたか46才)に受け継がれている。』
(文/編集長:昆吉則)

経営悪化の中で、最後の砦として取り組んだのが、
2005年に決断した放牧だった。
放牧の時、牛達が牧草地に出ていくところを見た時、
『何の根拠もないのですが、俺はこれで生き残れる』と思いました
「放牧を始めてみると、乳量は半減しました。でも牛は元気になり、
子牛も自然分娩で産まれるようになり、経営内容も改善されました」


2021年1月16日、「東信STオンライン研究会」で講演して頂きました。
録画してYou Tubeに公開しました。ぜひ、ご覧ください。

上野牧場のスマート・テロワール

https://youtu.be/pfiqEM-X1tc

上記のYou Tubeにない内容を下に補足します

・ 採草地込み面積13ha、放牧面積6haに、家族3名で、搾乳頭数32頭、
  育成牛10頭を飼う。

・ 1日中放牧であれば、1頭2アール必要。半日であれば1アールでOK。
・ 茨城の水郷地帯では、夏は暑いので夜間しか放牧できない。
・ 32頭前後の牛を、50aの農地に半日ずつ入れ、毎日牧区を変えながら、
  10牧区を10日で1周するように使っている。牧区を狭く区切るのは、
  その方が草をキレイに喰ってくれる。(全体で約6ヘクタール)
  但し、周回間隔も牧区の広さも、いろんなバリエーションが考えられる。
・ 若草ほど高蛋白になる。
・ 標高700〜800mであれば、昼夜放牧も可能と思う。
  寒冷地牧草があるので、輪換間隔(牧区の移動日数)は変わらないのでは。
・ 参考図書
    『草の牛乳』    野原由香利著 農文協
    『牛の未来』    野原由香利著 講談社
    『マイペース酪農』 三友盛行著  農文協
・ 『全国放牧畜産ネットワーク協議会』(2019年2月設立)という団体がある。
  アドバイスをいただくことができる。
  http://souchi.lin.gr.jp/houboku/data/application.pdf


ここで、声を大にして言いたいことは、次のことです。

上野牧場や小布施牧場にならえば、

日本の畜産は復活できる!


(同じ考えの事例)小布施牧場のスマート・テロワール

http://shinshumachidukuri.blogspot.com/2021/01/blog-post_31.html



『農業経営者』の記事は、下記URLから全文を読むことができます。


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大麦、玄米…全粒穀物で死亡リスク減

 NIKKEI STYLE 2月10日号 日経Goodday より

玄米や大麦、全粒粉パン、全粒シリアルなどの全粒穀物には、年齢とともにリスクが高まる糖尿病や心疾患、がんなどの疾病を幅広く予防する力があることが最新研究によってわかってきた。全粒穀物の何が効果を示すのか。どのくらいの量を食べるとよいか、その力を得る方法を3回にわたって紹介していく。今回は、全粒穀物に世界が注目する理由について、穀物の機能性に詳しい大妻女子大学家政学部の青江誠一郎教授に聞く。

健康向上に役立つことが最新研究によって証明

新型コロナ感染拡大が続き、あらためて健康維持の重要性を痛感している人も多いだろう。なるべく病気にかからず、スリムな体形も維持したい。ストレスに負けない心身でいたい――適度な運動や休息とともに、意識したいのが食生活。けれど、いろいろな情報があって数ある食材から何を選んだらよいのか、迷ってしまう。そんなときにお薦めできる注目食材が、全粒穀物だ。

全粒穀物とは、玄米や全粒粉、大麦やオーツ麦、ライ麦などの未精製の穀物のこと。「食物繊維が多く、ヘルシー」というイメージがあるが、実際に健康向上に強力に働くことが最新研究によって証明された。

2016年に、この全粒穀物や全粒穀物を使った食品を多く食べている人は心血管疾患などによる死亡リスクや総死亡率が下がり、糖尿病による死亡リスクは1日90gの全粒穀物で半分程度まで下がった、という研究が発表されたのだ(下のグラフ)。ちなみに糖尿病による死亡リスクを半減させた「90g」とは、3サービング分のことで、例えば1サービングは、全粒粉パン1切れ、全粒シリアル30gに相当する。


45の研究を統合解析し、全粒穀物の摂取量と4つの病気(糖尿病、心血管疾患、がん、脳卒中)による死亡リスクの関係を調べた。1日210~225gまでのデータでは、全粒パン、全粒シリアル、小麦ふすまなどの全粒穀物の摂取量が多いと、心血管疾患などの死亡リスクも総死亡率も下がった。糖尿病による死亡リスクは1日90gの摂取で半分程度と大きく下がった(データ:BMJ.2016;353:I2716を基に編集部で作成)

糖尿病は、30~40代から増加し始める生活習慣病で、厚生労働省の2019年「国民健康・栄養調査」では、「糖尿病が強く疑われる人」の割合は男性19.7%、女性10.8%(20歳以上)。年齢が高くなるほどその割合が高くなる。通常、糖尿病では「なるべく糖質の多い主食を減らす」ことが勧められるが、全粒穀物の場合、ある程度食べたほうがそのリスクが下がるというのだ。

糖尿病と全粒穀物ではもう一つ注目したい研究成果がある。2019年に、2型糖尿病の発生率と食事要因の関係を53の研究をもとに分析した前向き観察研究結果が報告された。

この研究では、2型糖尿病のリスクを減らす食品として「エビデンスレベル(科学的根拠の信頼性の度合い)が高い」とされたのは、あらゆる食品中で全粒穀物のみだった。全粒穀物の摂取量を1日30g増やすと13%、糖尿病リスクが低下していた。また、食品に含まれる成分別でみても、エビデンスレベルが高いとされたのは穀物から摂取する穀物繊維のみで、穀物繊維摂取量を10g増やすとリスクが25%低下した。ちなみに、同じ食物繊維でも、野菜と果物の食物繊維については、有意な相関なしとされている。また、同研究において2型糖尿病リスクを高める食品として、赤身肉(1日100g)、加工肉(1日50g)、ベーコン(1日2スライス)が「エビレンスレベルが高い」とされた[注1]。

全粒穀物というあまりお金のかからない食材で、しかも1日30g~90gとることによって病気のリスクを下げられるというのはうれしいニュースだ。穀物や海藻などの機能性について長年研究を行ってきた大妻女子大学家政学部の青江誠一郎教授は、「全粒穀物に関する研究は、2010年ぐらいから一気に加速し始め、現在もその勢いが止まることがありません。米国では心血管疾患予防、オーストラリアでは大腸がん予防、という死亡率を高める病気の予防対策として研究がさかんになりました。ここ数年、しっかりとしたエビデンスがそろい始めているのは素晴らしいことだと思っています」と言う。

食物繊維、抗酸化物質が削られずたっぷり残る

それにしても、全粒穀物でこのように幅広く疾患リスクが抑制されるのは、どうしてだろう。「その要因として多くを占めるのは、豊富に含まれる食物繊維の力でしょう。これに加え、外皮に含まれるポリフェノール類などの抗酸化物質、亜鉛やマグネシウムなどのミネラルも、まんべんなくとることができる。しかも、主食だからコンスタントにとれるということが、総合的に効いていると考えています」(青江教授)。

ここで、全粒穀物(Whole grain cereal)についておさらいしよう。

全粒穀物とは、外皮や胚芽をまるごと食することができる穀物のこと。白米や白パンでは、精白することによって外皮や胚芽を取り除くため、これらに含まれる食物繊維やポリフェノール、ミネラルなどの栄養成分が削り取られ、失われてしまう(下図)。

「でも、玄米はボソボソして苦手」という人は、食品売り場に行ってみよう。

米食でいうと玄米、発芽玄米、大麦[注2]、それに「五穀米」などとしてパッケージされている黒米、赤米、そば、きび、あわ、ひえなども全粒穀物だ。パン食なら、小麦の外皮や胚乳ごと粉にした全粒粉パン、外皮のふすまを含むブランパン、ライ麦パン。シリアルでは、オールブランや玄米シリアル、オーツ麦(オートミール)など。味も食感もさまざまな全粒穀物があり、幅広い選択肢があることを実感できるだろう。

[注2]麦ご飯用の大麦は、外皮が除かれているため厳密には全粒穀物ではないが、食物繊維量は全粒大麦とほぼ同じであることから同等に扱える。


全粒穀物の効能のカギを握るのが、豊富な食物繊維だ(下表)。 精白された米と比べると、その含有量の違いが一目でわかる。


全粒穀物には食物繊維が豊富
 
(データ:日本調理科学会誌 Vol.49,No.5,2016,日本食品標準成分表2015年版(7訂))

食物繊維の量が多いわけでなく、全粒穀物の食物繊維はその「質の良さ」に注目したい。

食物繊維は、その性質から「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」に分けられる。不溶性は水に溶けず、水を吸ってふくらみ、お通じのかさとなったり腸の動きを促したりして便秘改善に働く。

いっぽう、水溶性は水に溶けてねばねばと粘性を持つ。野菜ではゴボウやチコリ、海藻類など、限られた食材にしか含まれない水溶性食物繊維だが、大麦やオーツ麦には水溶性食物繊維「β-グルカン」が豊富。「β-グルカンは、食物繊維の中でも別格の働きを持ちます」(青江教授)。

「β-グルカンは、一緒にとった食品と混じり合いながら胃や小腸をゆっくりと通過します。このため、胃で膨らんで満腹感を高める、糖や脂質の吸収スピードを緩めて血糖値の急上昇を抑えたり、血中コレステロールを下げたりといった働きが確認されています」(青江教授)。詳しくは第2回で解説してもらおう。

これまで、全粒穀物の機能性は、大きく2つに分けられて捉えられてきた。
●全粒小麦に代表される不溶性食物繊維=腸の疾患の予防や改善
●大麦やオーツ麦に多い水溶性食物繊維=脂質異常症や糖尿病の予防や改善、腸内有用菌のエサとなって腸内環境を整える

ところが近年、「不溶性といえばお通じ改善、腸のお掃除やさん」という認識をアップデートしなければならない発見があったという。

「腸内発酵の解析技術の進化によって、全粒小麦に豊富な不溶性食物繊維であるアラビノキシランが腸内で溶出して水溶性の性質を発揮し、腸内でさかんに発酵することがわかってきました。つまり、不溶性食物繊維も、その種類によっては腸内で発酵するのです。これからは、“発酵性食物繊維”という切り口で食物繊維を見ていく必要があると考えています」(青江教授)。

「腸内で腸内の有用菌がこれら発酵性食物繊維をエサにすると、短鎖脂肪酸という物質を生み出します。この短鎖脂肪酸には、満腹感を高めて肥満を抑制する、血糖値の急上昇を抑える、血圧を下げる、免疫機能に好影響を与えるなど、幅広い機能が見いだされてきています」(青江先生)。冒頭の研究のように、全粒穀物の摂取量が多いほどさまざまな病気を予防できるのは、腸内で発酵が起こることが関係していると考えられる。

全粒穀物のエビデンスを踏まえ、米国では毎日最低3サービング分(90g)の全粒穀物食品を摂取し、1日に食べる穀物の少なくとも半分以上を全粒穀物にすることを食事ガイドラインで推奨(2015-2020年版 米国人のための食事ガイドライン)。また、オーストラリア、カナダ、英国を含めたEU諸国、シンガポールなどの各国も、全粒穀物食の摂取を積極的に推奨している。

日本人は“穀物離れ”で食物繊維摂取量が減っている
一方、日本ではどうだろう。

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、「食物繊維摂取量は、数多くの生活習慣病の発症率または死亡率との関連が検討されており、メタ・アナリシスによって数多くの疾患と有意な負の関連が報告されているまれな栄養素である」という食物繊維に関する記述が入っているものの、「何から食物繊維をとるべきかということにも、全粒穀物についても、一言も触れられていません。国は白米の摂取量を増やすことに重きを置いていますが、大麦を混ぜたご飯や玄米を主食にすれば健康になります、という指針を示した方が白米離れにもブレーキがかかるのでは、と思っています」(青江教授)。

日本人が全粒穀物をもっと取る必要があるのは、そもそも食物繊維の摂取量が1955年の20g以上から現在の約14gへと一気に減少していることと深く関係している(下のグラフ)。しかも、グラフをみると、穀類からの食物繊維摂取量が約7割も大幅に減少し、食物繊維摂取の減少に大きく影響を与えていることが読み取れる。

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で定められている食物繊維目標量は、「1日あたり成人男性21g以上、成人女性18g以上」。現状の食物繊維摂取量では、「不足」の状態にあることがわかる。

白米ごはんには100gに0.6gの食物繊維しか入っていない。「たとえ、食物繊維を少ししか含まない白米だといっても、日々、コンスタントにとる主食であるために、全体量への影響が大きくなるのです。米離れとともに、大麦などの雑穀が食べられなくなったことも原因のひとつです。日本人の食物繊維の補給源は、穀類が重要です。まず、しっかり主食をとること。さらに、主食を全粒穀物に変えると、楽に、簡単に、効率的に食物繊維の摂取量を増やすことができます」(青江教授)。

穀物由来の食物繊維量が大幅に減っている

1955年と2019年の日本人の食物繊維摂取量を比較すると、戦後間もない1955年と比較して全体量では約3割も食物繊維摂取量が減っている。なかでも、穀物由来の食物繊維が約7割も減少している(データ:日本食物繊維研究会誌;1,3012,1997,厚生労働省国民健康・栄養調査報告)

でも、糖質のとりすぎは良くないんでしょう? という疑問はもちろん正解だ。

糖質をとりすぎると、血糖値が急上昇し、糖を処理するためにすい臓から分泌されるインスリンの働きによって余った糖が内臓脂肪としてためこまれ、肥満につながる。また、糖尿病の発症要因になったり、皮膚のたるみやしわ、動脈硬化を引き起こす「糖化」の一因にもなる。糖質の過剰なとりすぎはメタボや老化を加速させる。

「しかし、それは砂糖を多く含む菓子や清涼飲料水のとりすぎ、白米や白パンといった精製された穀物のとりすぎに問題があるということです。安易に主食の摂取量を減らしてしまうと、食物繊維不足に拍車がかかります。さらに、穀物由来のでんぷんや食物繊維を腸で待ち構えている乳酸菌やビフィズス菌などの腸内細菌のエサの枯渇を招き、私たちの健康を支えている腸内細菌叢にも悪影響が及ぶのです」(青江教授)。

私たちの健康を下支えする全粒穀物についてしっかり見直していきたい。第2回では、巣ごもり生活で気になる「メタボ」を改善する働きについて、さらに見ていこう。

(ライター 柳本操、図版 増田真一)

[日経Gooday2021年2月1日付記事を再構成]

青江誠一郎さん

大妻女子大学家政学部食物学科教授。1989年、千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了。雪印乳業技術研究所を経て2003年に大妻女子大学家政学部助教授、2007年より現職。穀類、藻類の食物繊維がメタボリックシンドロームや消化管機能に及ぼす影響を研究する。

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「誰が中国を養うのか?」(レスター・ブラウン著)

 上野牧場の当主上野裕さんが、私はこの本で救われたと講演の中で述べていました。筆者は早速本を注文しましたが、ネットで検索すると、下記に掲載されていましたので、引用させてもらいます。上野さんが危惧したように、日本にとってこの本の指摘は真剣に対策を練る必要があると思います。スマート・テロワール構想は


2014年12月25日発のDIAMOND online

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深刻化する食糧安保、活発化する海外進出


 1994年に米民間シンクタンク・地球政策研究所長のレスター・ブラウンが、「誰が中国を養うのか?」という鋭い質問を出した。迫りくる食糧危機の時代に早くも警鐘を鳴らした。しかし、当時の中国はむきになって反論していた。

 だが、それほど時間が経たないうちに、中国の専門家も政府側もこの警告には耳を傾けて聞く必要があるということに気づいた。

食糧輸出にブレーキをかける

 2003年までは食糧輸出国だった中国が、2004年は歴史上初めて純食糧輸入国に転じた。その後の食料栽培刺激策の成果もあり、2006年からまた穀物の純輸出国の地位を取り戻したが、輸出の規模はかなり小さくなった。食料はますます戦略商品化する一方だ。

 2007年7年12月、共産党政治局会議は中国国内の農業生産にさらに力を入れ、農産品の安定した供給体制を確保しようと、自ら中国の食料安全保障問題に対して警鐘を鳴らした。

 それを受けて、中国政府は一連の緊急措置を講じた。小麦、コメ、大豆など84種類の食料とその粉末加工品に対して、輸出促進を目的として設けた5~13%の輸出還付税を同12月20日から廃止した。さらに、同12月30日には、2008年1月1日から12月31日までの1年間、小麦、トウモロコシ、コメ、大豆など穀物と穀物製品の8種類57品目に5~25%の輸出関税を課す、とさらにこれまでの食糧輸出促進政策にブレーキを踏み込んだ。

 中国が急速に食料輸出国から食料純輸入国へ変わりつつあることが、その背景にあると言えよう。

 2012年は、中国の食糧需給率が90%を切ったといわれている。食糧危機、食糧安保という言葉がメディアに頻繁に露出するようになった。習近平国家主席も「食糧安保は中国の恒久的な課題であり、いかなるときも気を抜いてはならぬ」と叱咤している。・・・続く。

続きは、下記URLからどうぞ。
https://diamond.jp/articles/-/64267


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