DIAMOND online 2021.3.3 より
要点を抜粋させて頂きました。詳細は下記URLからどうぞ。
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三井不動産が日本最大「3000ha農場」計画、エリート社員が有力農家に丁稚奉公
ダイヤモンド編集部 千本木啓文:記者 特集 JA陥落 農業沸騰
農業の“門外漢”ともいえる三井不動産が農業事業への参入を果たした。収益力や成長性で定評のある農業法人、ワールドファームと資本提携し、日本最大級3000ヘクタールの農場を目指す。特集『JA陥落 農業沸騰』(全21回)の#5では農業界のトップ農家とタッグを組めた背景や、三井不動産が目指す農業ビジネスの将来像に迫る。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
2025年までに20億円を投資し
100ヘクタールの農場・工場を展開
ワールドファームは、ダイヤモンド編集部が毎年選定する「レジェンド農家トップ20」の首位をほぼ独占してきた農場であり、両社の資本提携は、まさに強者と強者のタッグといえる。
プロジェクトの主体となる両社の合弁会社、三井不動産ワールドファーム(MFWF)では、三井不動産のエリート社員が、慣れない苗の植え付けなどに悪戦苦闘しながらも首尾よく農作業を体得しているようだった。
MFWFは日本最大規模の「3000ヘクタールの農場」を目指すというアグレッシブな計画を掲げている。そこで、三井不動産出身の岩崎宏文・MFWF社長に高いハードルを掲げた真意について語ってもらった。
三井不動産がほれた
有力農家のビジネスモデル
「ワールドファームのビジネスモデルは腹に落ちた。これなら数百億円規模へスケールでき、農業振興という大義を追求できると確信した」
岩崎氏は農業参入に当たってワールドファームと組んだ理由をこう語る。
ワールドファームは、野菜の生産と加工を社員が一人二役で行うことで高収益を上げて(下表参照)、20年間で600ヘクタールの大規模農場に成長した農業界のレジェンドである。
実は岩崎氏が三井不動産で農業に関わるのは今回が初めてではない。2015年に同社が所有する植物工場を運営する「みらい」が破綻した際、その処理に当たった経験があるのだ(みらいの事業はその後、マサル工業に譲渡され、MIRAIとして経営を再建)。
みらい破綻の原因は、工場製野菜の生産が安定しなかったことにある。この苦い経験があるからこそ、岩崎氏の生産重視の姿勢は徹底している。農場がある茨城県に単身赴任し、当面は社長自身が生産現場に立ち続ける覚悟だ。
「当初はすぐ腰が痛くなってしまって、苗の植え付け作業を(自分の担当の)半分もやり切れなかったが、最近では最後までできるようになった。筋肉質になって体力が付いた」と語るなど、都心のビル街を闊歩するビジネスマンから農場経営者にすっかり変貌している。
ワールドファーム関係者は「週1回農場に来て、打ち合わせして帰るようでは信頼関係を築けない。20代の社員と一緒にへとへとになるまで農作業をしているのは好感が持てる」と岩崎氏を評価する。岩崎氏は取材当日も、ワールドファームの上野裕志社長に、キャベツの品種や栽培方法について真剣な表情で教えを請うていた。
MFWFは、ワールドファームから生産、加工のノウハウや、農場長クラスの人材の提供を受け、25年までに100ヘクタールまで拡大させる計画を立てている。
当座の目標が「100ヘクタール」という規模に設定された理由は、「100ヘクタールの農地+カット工場+約45人の従業員」というのがワールドファームのビジネスモデルの1ユニット(単位)となっているからだ。
そのために必要な工場の建設や農機、農地の確保などにざっと20億円が必要になる。MFWFは、「1ユニットを展開するのに必要な事業資金は確保している」(岩崎氏)。MFWFの資本金は2億3500万円だが、これとは別に三井不動産は相当の資金を投下する覚悟があるようだ。
MFWFは、まずはモデルとして100ヘクタールの農場を軌道に乗せて、成功モデルを全国に増殖していく計画だ。
新たな郊外型の開発に挑戦
東京100キロ圏内を農業で活性化
そもそも、街づくりを生業にしてきた三井不動産が農業に本格参入するのは、都心部から約100キロメートルの通勤圏内の郊外を農業で活性化させるためである。
農業による雇用創出にとどまらず、他の仕事を持ちながら、体験も含めて農業に関わる「農業関係人口」を増やそうという心積もりなのだ。生産した農産物は、開発した都心などのホテルやレストランで使われる。都心と郊外との間で、ヒトと農産物を往来させることによって、農業と街を同時に振興しようという野心的な試みなのである。
壮大な計画であるだけに、一朝一夕では実現は難しい。そんなことは三井不動産も百も承知で、ワールドファームとの提携交渉では「10年は一緒に農業に取り組む」と約束したという。ワールドファームの上野社長は「長期的なコミットメントを示してくれたので信頼できた」と太鼓判を押す。
課題は、ずばり人材育成だ。MFWFは、農場拡大のコアになる人材をワールドファームから複数名出向(あるいは転籍)させて獲得する予定だが、いずれは自前で人材を育てなければならない。
農家の企業アレルギーは軽減
農家だけでは農地は守れず
高齢農家の引退に伴って耕作放棄地は拡大の一途をたどっている。
そのため、企業が持つ人材力・資金力を使ってこのピンチをチャンスに転換しようとする地域は増えている。かつては企業の農業参入に対してアレルギーを示していた農家側も、意識が変わってきている。
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