2019年11月11日月曜日

Cloud時代の思考傾向と経済原理

チャンプ (藤沢市湘南台:代表山本儀子) の会員梅澤正巳様より
素敵な論文を頂きました。難しい言葉や表現が使われていますが、
読んでみると判り易いです。
難しい今をどう生きるか、貴重な指針だと思います。

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      Cloud時代の思考傾向と経済原理
                
著者梅澤正巳氏紹介:1941年東京生まれ。ソニーと半導体販売の合弁企業現UKCHD
を設立。一部上場達成、副社長、最高顧問を経て隠退。以後、経営コンサルティング会
QJ()を設立し、75才まで代表を務めた。この論文は隠退の際、後輩経営者のため
20173月に書かれた。チャンプ(藤沢市湘南台:代表山本儀子)会員。(安江髙亮記)

昨今、Internet社会の功罪得失が、盛んに論じられている。しかし、これらの現象は、新しい技術が世の中に普及して行く過程において、何時もながら発生する事態で、格別の事ではない。つまり、それは新しい技術そのものが持つ問題点ではなく、それを使う人間の側の問題であり、単にそれを駆使する方法だけでなく、むしろその捉え方、考え方の問題が根底にあると考えられるのである。少しくその現象を観察してみる。

Dunning Kruger(ダニング・クルーガー)効果について;
是は一種の認知バイアスと云われる。自分の愚かさ加減を知らないにも拘らず、自分は正しいと過剰な自信を持ちOne patternの行動を繰り返すことである。
結果として、公正かつ冷静な判断が出来ない症状を来たすことになる。
自分以外、誰一人正しい者は居ない、だから誰の云う事も聴く耳は持たない。
唯我独尊の狭量な世界に閉じ籠もり、只管その中で生きることになる。最も非生産的な思考と行動のStyleである。

だがこれが、今の時代、其処ここに出現するTop Leaderの姿と重なり合うから不思議なのである。それは、InternetComputerが齎すCloudの時代の、為るべくして為る当然の帰結なのかもしれない。回線に繋がって居れば、狭い世界に閉じ籠もっていても、必要情報が得られ、何不自由なく暮らすことができ、受け身であってもあらゆることを教えて貰える。

どうせNetで調べれば殆んどのことが判る、だから専門書を紐解いたり、態々古典を訊ねて、昔の賢者に学ぶのは面倒なことだ。余計なことは考えずにいるのが一番賢い。Netに始終繋がって居れば、何より安心だからだ。何か厄介な問題が起こったら、Netを素早く検索し、その結果を自分の判断とすれば良い、以上で完了、That’s allである。
是は、人間の最大の特性であり、進歩の支えとなっている「疑問をもち、考え、悩み、学んで、前に進む」過程を一切除去してしまう。当に悪魔の誘惑の罠に嵌ることではないか。
是が一個人の性向に止まっている間は、左程の弊害は無いのかもしれない。
しかし、そうは行かないのがCloud時代の怖さである。あらゆることが繋がり、あらゆる善行も悪行も、アット謂う間に世の中に広まって仕舞う。特に、楽をして得を取る方法があれば、その傾向は覿面に広がらざるを得ない。そしてそれは、今まで無かったような現象を社会に齎すことになる。

知識のない者が、知識のある者とは異なる政策を支持し、その数が知識のある者を上回ると、社会は途轍もない不安要因を抱え込むことになると言われる。
つまり、ある事が正しいから支持されるのではなく、大多数の人々が賛同することが、然したる理由もなく正しい事であると決めつけられてしまう現象が表われ易いことを、指摘しているのである。

そしてそのことは、もう50年程前になるのだろうか、ちぎり絵とsketch画で特異な才能を現わしていた山下清さんが「日本ぶらりぶらり」と云う旅日記に殆どひらがな文で、こう書いていた。
「ぼくは新聞はめったに見ないが、時々読むと、みんな本当の事ばかりではないような気がする。うそと本当はどのくらいの割合で世の中にあるものだか判らなくなる。大勢が本当と云えば、うそでも本当になるかも判らないので、世の中の事はぼくには判らないのです」と。彼は、所謂知的発達障害者であったが、異能の主がもつ天賦の才は、絵画だけでなく極めて鋭敏な感覚で世の中の裏側を観ることができたのであろう。

大多数による暴力と云う言葉があるが、単に大勢が支持するというだけで、昔からの決め事やruleが覆され、諸悪の根源のように槍玉に挙げられ、否定され、価値の反転が起き、社会秩序の崩壊すら招くようになるかもしれないのが今の時代ではないのか。

確かに、改革には時代遅れとなった伝統や慣習の否定が不可欠である。
しかし、伝統や慣習には過去の人間の知恵の累積があるのも事実であり、其処では是々非々に、選択の論理として正常な理性が働かねばならない。さもなければ、社会は徒に混乱し、Anomie(無秩序)状態を齎すことと為ろう。
是は、西欧諸国の選挙戦の過程とその後の状況を見れば、一目瞭然である。

*経済原理としてのCapital蓄積について;
かって、Engel係数という人間生活の文化度を顕わす指数が盛んに用いられた。
Engel係数が高いとは、収入のほとんどを食費が占めてしまい、必然的に教育や趣味や文化・Sportなどに費やす金が無くなってしまうことである。勢い生活は、石川啄木の嘆きの詩「生きるために働くのや、食うために働くのや、判らなくなれり」状態となり、人間は生きる意味を見失う。収入が全て生存の為だけに使われていては、先に夢を繋ぐための貯蓄や国民の義務である納税すらできず、子孫に国の礎すら残せない状態となる。つまり、先の展望が開けないのである。

人は、先々に夢が描けなければ、辛いことの多い今現在を生きられず、明日を生きる意味を見出せなくなる。マイナス思考の際限のない継続は、人間に諦めを齎し、創造的活動の意欲を削ぐことになる。この「負の循環」を断ち切る以外、人間個人も企業も発達を促す活力を醸成することは出来ない。

しかし、Dunning Kruger効果の現象も、Cloud社会における人間集団の思考傾向も、決して我々の別世界の事ではないのである。それどころかこの現象は、いま今の我々個人や企業活動の中に既に潜んでおり、日々の行動を蝕んでいるのではないか。是は、何としても正常な軌道に戻さざるを得ない。
中でも、Capital蓄積の経済原理は、資本主義社会を生き延びる普遍の鉄則である。目先の現象に惑わされ、目を逸らしても実態は何も変わらず、時間の経過と共に、負の要素が拡大するにすぎない。

企業活動も個人生活も、鶏が先か、卵が先か,ではなく飽くまでも、鶏が先、先行投資が肝心なのである。先行投資とは、飽くまでも長期思考であり、目先の収益に囚われ、固執する事ではない。Riskのない投資では、足元を観られ、大きな利益は期待できず、借金を返済するどころか、先々に繋げる余剰の利益を生み出すことはできないのである。

今、この2つの現象を取り上げたのは、組織体や個々の人間も必ず節目となる時期を循環的に迎え、新たなStartを切る事が、宿命付けられているからだ。
そして現在のような超Speedの環境下にあっては、旧来の安易な考え方の踏襲では新たな局面を乗り越えることはできない。真摯な反省によって、変革要因を浮き彫りにし「新たな考えと仕組み」が覚悟をもって進められねばならない
からである。

現代の世界は、徒ならぬSpeedで動いている、個々の企業や個々人が他国や競争相手より大きな躍進を目論み、明るい明日を目指すなら、世の中のSpeedで併走するのは勿論、寧ろそれを超えたSpeedで計画を練り上げ、その行為を着実になし遂げねばならない。
そしてそのためには、今世界に起きている大きな社会現象や人心の動勢を見極める事が、我々の日常を支える基盤であることを改めて知らねばならない。
目先の事のみに一喜一憂し、安心と杞憂を繰り返していては、前に進むことはおろか、取り残され、死体を巷間に晒す憂き目を見ることとなろう。
今ほど、広い視野と自分の確固たる視点が求められる時代は無いのである。


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2019年11月4日月曜日

地消地産は地域の経済成長につながる論拠


『農業経営者』2019年6月号 「スマート・テロワール通信 22号」より

古田教授は地域内経済循環を測定した。
手法は「地域内乗数3(LM3)」という指標によるものだ。

LM3とは:
英国の独立系シンクタンクが考え出した理論で、
3回分の取引でどれだけのお金が地域に落ちたかという視点で集計されます。
難しそうですが、読んでみると納得できます。

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中田康雄の気づき 

地消地産は本当に地域の経済成長に寄与するのだろうかと疑問を抱いたことはないだろうか。
長野県大学環境ツーリズム学部の古田睦教授が長野県の委嘱で行なった「上田・佐久北部地域食料自給圏消費実態調査」のなかに、ぜひ紹介したい報告がある。
古田教授は地域内経済循環を測定した。手法は「地域内乗数3(LM3)」という指標によるものだ。たとえば同じ100万円が投資されたとしよう。地域内循環率が80%の場合、地域内には最初に80万円残り、地域外には20万円流出する。次に80万円の80%の64万円残り、その次には64万円の80%の51万円が残る。こうして地域内に残る金額を足していくと最終的に500万円になる。
一方、地域内循環率が60%の場合、同じように計算すると合計は250万円になる。つまり、地域内循環率が80%の場合と、60%の場合では、地域内の所得の効果は2倍も違うのである。
LM3は、資金循環の最初の3回だけを対象として乗数効果を測定する方法である。3回を検証すれば効果が明らかだからである。
この手法を用いて古田教授は東信地域の豆腐について測定した。
1~3回目をR1~R3とする。
R1:豆腐の小売店売上高
R2:豆腐の地域内購入額
+地域内豆腐加工業人件費
+地域内豆腐加工業者所得
+地域内流通人件費
R3:大豆生産者所得+大豆生産者地域内資材購入額とする。
LM3は(R1+R2+R3)/R1で算出する。
A:豆腐についてすべての大豆を「域外」から仕入れた場合、LM3は1・39。
B:すべての大豆・その他資材を「域内」から仕入れた場合、LM3は1・74。
C:「域外」生産の豆腐を仕入れた場合、LM3は1・11。
つまり、Bのように、すべて「域内」から仕入れることによって、地域の経済成長につながっていくという論拠が数字で示されたことになる。
地消地産は地域の経済を成長させる原動力である。


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