2020年11月30日月曜日

「地域内循環]は、なぜ地域を豊かにするのか?

「地域内循環は、なぜ地域を豊かにするのか?」

1万円を、AさんとBさんで、違う使い方をしてもらいます。

         Aさんは、買い物の場所に拘らない。

         Bさんは、できるだけ地域内で買おうとする。

         果たして、どうなるでしょうか?


[ Aさん ]


                            1万円のうち8千円を地域外のスーパーなどで使う。

                            2千円を地域内のクリーニング店や八百屋で使う。

                            地域で使われるお金は20%(2千円)

Aさんのパターンが続くと・・

                                                 元      地域で使われるお金    

                           ・1巡目  10,000円  ➔  2,000円

                           ・2巡目    2,000円       ➔   400円

                           ・3巡目   400円   ➔     80円

                           ・4巡目             80円     ➔     16円


                               地域内で使われるお金は、 

                              10000円十2000円十400円十80円十16円= 12,496 円




[ Bさん ]


                            1万円のうち8千円を地域内のパン屋や八百屋で使う。

                            2千円を地域外で買い物に使う。

                            地域内で使われるお金は80%(8千円)


Bさんのパターンが続くと・・

                                                 元     地域使われる 累計額

                         お金

       ・1巡目  10,000円  ➔  8,000円  18,000円

       ・2巡目    8,000円  ➔  6,400円  24,400円

       ・3巡目  6,400円  ➔  5,120円  29,520円

       ・4巡目       5,120円  ➔  4,096円  33,616円

       ・5巡目   4,096円  ➔  3,277円  36,893円

       ・6巡目   3,277円  ➔  2,621円  39,514円

       ・6巡目以降(10円の台になるまで)   49,631円


                               地域内で使われるお金は、 

                              10,000円十8,000円十6,400円十5,120円十・・・約 50,000, 円



地域で使われるお金は、Aさんのパターンが12,500円、

Bさんのパターンが50,000円

地域で使われるお金(所得)が約4倍になります。

これが、地域内循環が地域を豊かにする原理です。




考え方を変えてみます。これは仮説ですが、


地域内で売られている全ての商品の80%が地域外からきているものだとします。

買い物のお金の80%が地域外、或いは外国に行ってしまいます。

仮に、東信地域の住民が、全ての買い物を地域内でしたとしても、

地域内に残るお金はAさんのパターンのようになってしまいます。


東信地域の商品販売額の総合計は約8,000億円ですが、

地域内で使われるお金は、

4巡目で、8,000 億円✖️ 1.2496 = 9,996 億円 = 約1兆円です。


逆に、地域内で売られている全ての商品の80%が地域内のものだとすると、

Bさんの考え方で、地域内で使われるお金は、

Aさんの4倍ですから、4兆円となります。


つまり、地域内の所得が約4倍になります。


(これは仮説ですが、大きな的外れでもない気がします

実は、生産物の自給率が判っていないのです。

松尾雅彦さんはこれを50%にしようと提案しました。)



これを、地域内乗数効果 (local multiplier effect)と言います。
ロンドンにある市民団体ニューエコノミックス ・ ファウンデーション
の研究成果のひとつでL M理論」と言います

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2020年11月28日土曜日

仲間になってください!

東信スマート・テロワール を実現するために!




仲間になってください!

義務的な行動を求めることはありません。頂きたいのは、
私どもの考えに対するご理解と資金援助としての会費の納入です。
この運動は農業のためだけの活動ではありません。
生産者から、加工、流通、レストラン、施設・家庭消費、そして環境保全・美化まで含めた地域の改革を進める市民運動です。
     
スーパーで食品を買う主婦の役割が一番大きい気がします。
食の問題に無関係な人はいない筈です。
あなたも仲間になってください。

正会員 : 年会費 6,000円

賛助会員: 年会費 一口10,000円で できるだけたくさん
      賛助会費には、税的優遇措置があります。
      個人の場合は確定申告の際に、一定割合で税額控除があります。
      法人の場合は、特別損金参入ができます。
      詳しくは、下記をクリックしてください。

         NPO会員の税的優遇措置について  

活動内容:下記URL:「スマート・テロワール とは!」をご参照ください。
https://shinshumachidukuri.blogspot.com/2020/11/blog-post_2.html     

     月次の勉強会と年2〜3回の大会がありますが、参加は自由です。

[お問い合わせ]お気軽にどうぞ。朝8時から夜10じまでOK。メールは24時間。

メール:事務局:contact@smk2001.com
ケイタイ:安江高亮:090-3148-0217


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2020年11月20日金曜日

日本の困った食の事情

日本の農業と食は大変な問題を抱えています。

食料自給率の低下


便利で何でも間に合う日常の食生活を良しとするのは問題です

私たちの日常生活では、食生活に不便を感じたり不満を持っている人は少ないのではないでしょうか。コンビニやスーパーで、欲しいものは何でも手に入ります。食の内容はともかく、生物、レトルト食品、冷凍食品など、時には通販で遠方の名物も手軽に手に入ります。食生活に何の問題もないよ、と思われているかもしれません。

このホームページから私たちの食に関する仕組みがどのようになっているか理解を深めてください。


農水省が政策のために使う日本のカロリーベース自給率では38%(2019年には37%)、生産額ベースでは66%です。ですが、統計にはいろいろカラクリがあるようです。カロリーベースの計算根拠には問題がありそうです。詳しくは農業ジャーナリスト浅川芳裕氏(スマート・テロワール協会顧問)の著書「日本は世界第5位の農業大国」(講談社新書)をご参照ください。自給率だけでなく、農業問題の本質が見えてきます。2010年の出版なので数字に違いがありますが、論旨は今でも有効だと思います。

G7の中でもO E C D加盟国の中でも最低ランクです。異常に自給率が低いという認識を持ちましょう。


🔹 先進国は皆農業国です

この表から読み取りたいことは、先進国は皆食料自給率が高いことです。何と言っても食料は人間生存の基本です。ひとたび戦争や天変地変が起こり食料の輸送が途絶えたら、島国の日本はたちまち餓死者を出すことになります。

因みに、日本のエネルギー自給率は、経済産業省資源エネルギー庁のデータによると、2017年現在で9.6%です。海上輸送が途絶え、備蓄分を使い尽くせば、全てが止まってしまいます。車もトラクターも家の電気も。それでも食料さえあれば命をつなぐことはできます。


 
日本の食料自給率低下の現実(昭和40年⇨平成29年)


🔹 米の消費が半減し、肉と油脂の消費が増えた

カロリーベースの自給率は問題がありそうなので、生産額ベースを使おうと思いましたが良いデータが見つけられず、カロリーベースのグラフを使いましたが、趨勢は変わりません。縦軸は摂取カロリー率で、横軸は自給・輸入率。昭和40年度(左)を見ると、米で45%のカロリーを摂り100%自給できていたことが判ります。平成29年度を見ると、米からの摂取が半分になり、その不足を肉類と油脂類で補っていることが判ります。畜肉の摂取カロリーが米にほぼ匹敵しています。食が和風から洋風に大きく変化したことも一つの要因ですが、農林族議員やJAの都合もあったことでしょう。

ご興味のある方は下記農水省の重量ベースのデータをご参照ください。

https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/attach/pdf/012-6.pdf


🔹 黄色部分は、輸入飼料(餌)によって飼育された畜肉

注目するのは黄色部分(書いてありませんが大部分がトウモロコシと大豆)です。輸入した飼料で飼育された畜産物です。餌(原料)が輸入なので肉も輸入品として計算されます。ソバはこのグラフにありませんが、農水省の統計でみると自給率は30%です。

自給飼料と輸入飼料を合わせた畜肉の輸入比率は84%になります。肉の味は餌で決まります。飼料(餌)の味はその地方の土で決まる筈です。蓼科牛の餌はほとんどが輸入なのでその味は外国の土の味です。信州そばも蓼科牛もテロワールと言うには無理があります。小布施牧場はまだ始まったばかりですが、放棄・荒廃農地を活用して牧草とトウモロコシを作って、この課題を解消しようとテロワール創りを計画しています。(別処で説明)


🔹 農産物輸出入の国際比較 日本は世界一の輸入超過国(輸入額-輸出額)!

世界の主要国は輸出と輸入のバランスが取れている。食品は工業製品と同じで多様だからです。互いに貿易し合っています。日本は農業の競争力をつける努力を怠った結果、輸出が少ない。山下氏は「米を自由化して競争力を付ければ極めて有望である」と強調しています。その通りだと思います。




































◉自給率を下げた要因が環境汚染と食の安全の不安をもたらしている

🔹 耕畜連携の脆弱が環境汚染を生じさせる

上のグラフから見えてくるのは、米以外の穀物(トウモロコシ、麦、大豆)と畜産の飼料の不足です。この事実が環境汚染を引き起こしています。不思議に思われると思います。要点だけ説明いたします。

結論から言いますと、生産、加工、流通、サービス、廃棄物と畜糞の適切な処理、耕地への還元という食に関わる産業の地域内循環がごく一部しか機能していないからです。大きな原因は、外国から輸入してしまうため、還元する畑がないからです。水田に堆肥を入れるのは困難です。結果として、不適切なまま処理されたり、不法に投棄されたりすることにより環境汚染を起こしています。筆者の町では数年前に山中に不法投棄してあった牛糞が大雨で大量に流失し、大きな河川と耕作地の汚染を起こし、県と町が代理執行で1億円ほどかけて対策しました。昨年、水質検査をしましたが、B O D(汚染の度合い)が最悪でした。隣の河川はそのまま飲めるほどでした。


🔹 不適切な堆肥処理が硝酸態窒素(しょうさんたいちっそ)による地下水汚染を起こす

適切に耕地に戻されなかった堆肥から硝酸態窒素が地下に浸透し地下水汚染を引き起こしています。日本中で起きているようです。国内で循環していればまだ良いのですが、海外から持ち込まれた窒素が国土に堆積し、バランスが崩れていくのは問題です。「かつて幼児に対する深刻な硝酸態窒素汚染の影響を受けたEUの環境基準は厳しいものになっています。日本では欧州基準を満たさない畜産集中地域の地下水を使ったミネラルウォーターから硝酸態窒素が検出されています。」


NPO法人食品と暮らしの安全基金(日本子孫基金)

http://tabemono.info/report/report_7_216_2.html


🔹 食の安全は確保できるか

食の安全基準が国により違います。輸送中の品質の保持のためポストハーベスト(収穫後の農薬使用)の問題もあります。入国時の管理は行われていますが、自国の食物より安全率が下がることは避けられないでしょう。何と言っても食べ物は新鮮であるほど美味しく栄養価が高いことも周知の事実です。自給に越したことはありません。

🔹 畑作穀物生産の激減が荒廃耕地を増やした

米以外の穀物生産が激減した結果、畑が放置され、最近は作業効率が悪い中山間の水田が引き受け手もなくて放置され、農村には荒廃地が広がっています。2015年頃、150万ヘクタールの休耕田と40万ヘクタールの耕作放棄地があると言われていましたが増え続けています。東信地域の耕作放棄地面積は2005年の4469ヘクタールから2015年には5511ヘクタールに、1042ヘクタールも増えています。(上田と佐久の地域振興局農政課調べ)
この量は東京ドームにすると222個分です。東信地域だけで、毎年ドーム22個分ずつ荒廃農地が増えたことになります。因みに、転作面積はそれほど変わらず、2015年現在で約4000ヘクタールあります。

別処で説明いたしますが、「スマート・テロワール構想」はこれらの問題も解決します。小さいですが、そのモデルもできています。

農水省が発表している全国の荒廃地面積は平成」26年で2760km2です。これは東信地域2477ヘクタールより少し大きいです。これらの土地が活用されるのを待っています。


◉ 東信地域の中小畜産業が風前の灯火

安い輸入肉がどんどん入ってくる、飼料も地域にないので高い輸入品を買わなければならない。このような状況が数十年続いた結果、中小畜産業は激減しました。当NPOの事務所がある立科町では20戸以上あった養豚業者はゼロに、10戸以上あった肉牛・酪農業者は数戸となり後継者も望めない状況です。これでは耕畜連携(穀物生産農家と畜産農家の連携)による循環型農業は望めません。

ですが、復活の可能性はあります。別処で述べます。


🔹 「佐久広域食肉流通センター」(屠場)の経営継続

2020年9月、佐久広域連合が運営している「佐久広域食肉流通センター」(屠場)の経営継続問題が突然持ち上がりました。この10年来赤字経営が続いていて、佐久広域連合(2市5町4村)からの赤字補填が問題となっていたところに、2021年4月から施行が定められている畜場法による食肉処理施設の衛生基準に適合する施設(HACCP施設:ハサップ)化導入問題が重なり、存続の危機に直面しています。3月までに民間移転ができなかった場合は廃止すると決議されているといいます。

いろいろ難しい問題があるようですが、規模を縮小してでも存続しないと蓼科牛をはじめとするこの地域の畜産物がが「テロワール」でなくなってしまいます。誇りある地域(テロワール)の存在意義がかかっている問題です。ぜひ、広域連合議会で前向きで将来を見据えた深いご検討をお願い申し上げます。

尚、「蓼科牛」のブランド商標はJA佐久浅間のものですし、畜産業者はJA佐久浅間の組合員ですから


佐久広域食肉流通センター

http://www.areasaku.or.jp/gyosei/01kouiki/shisetu/o_shokuniku.html


◉ 零細すぎる中山間地の農地

🔹 中山間地水田の畑地への転換が必要

米は余っています。中山間の米の生産コストがかかりすぎるので、兼業農家はほとんど赤字だと思います。自家用は別にして、そこで生産を続けるのは個人的にも国にとっても損失です。圃場と経営と両方の改革が必要です。米以外の穀物(トウモロコシ、小麦、大豆、ソバ等)の効率生産には大きな畑が必要です。余剰の水田は皆小さいので、そのままでは用をなしません。

米以外の穀物の効率的な生産ができないと、牛、豚、鳥の餌を輸入しなければならないばかりか、糞尿のもって行き場所がないため、前述の環境汚染問題を引き起こします。荒廃地が放置されています。後述しますが小布施牧場では放牧型ニュージーランド方式を取り入れてこの大問題解決の答えを出してくれています。水田転作の大豆・麦の生産がいかに非効率で高くつくかは、下方にある「水田転作の麦、大豆の営農状況」をご覧ください。

因みに、世界の食産業の研究をされている大学教授に、「北米の小規模の大きさはどれほどですか?」とお聞きしましたら、「40ヘクタールくらいでしょう。」とのことでした。


🔹 平野部の大規模農家の米生産コストは7000円〜8000円/60kg、長野県平均の半値

欧米では余剰農地は牧草地にされて放牧が行われているそうです。下図は平成30年度の農水省の米の生産規模別コスト比較のデータです。東信地域は平均すれば0.5ha未満だと思いますが、30ha以上と比べるとコスト差が2.5倍もあります。このグラフにはありませんが、平野部の米所の100ヘクタール規模の大農家では7000円~8000/60kgで作られている筈です。多分、カリフォルニア米に相当する価格だと思います。零細農家が農地を専業農家に使わせてやれば、零細農家は赤字から解放され、専業農家は安価な米を生産することができます。両方が得します。


◉農政の国際比較

下図は、各国の農業に対する補助金が農産物生産価格に占める割合をO E C D(経済協力開発機構)が計算したものです。日本の比率はO E C D加盟諸国平均の2.5倍になっています。




  P S Eとは:《producer subsidy equivalent》生産者補助金相当額。農業保護政策には大別して価格支持と政府補助金の2 種類があるが、共に生産者へ金銭的「移転」(monetary transfer)をもたらして生産を刺激する、という意味では同じなので、この 2つの移転額を合計しPSE という単一指標で表した。(移転=補助)


🔹 水田転作補助金の異常さ

ちょっと古い記事ですが、内容は今でもそのまま通用します。農業評論家の叶芳和さんが書いています。


食料自給率とトウモロコシ国産化の寄与度

https://agri-biz.jp/item/detail/4034


🔹 農家と国民のための農政に転換するべき

キャノングローバル戦略研究所(CIGS)の山下一仁主幹は次のように書いています。農家と国民のための政策論です。2019年、安倍首相の「減反を廃止し、米を自由化する」という政策に対する抗議です。

「表向きは生産調整から手を引いたが、転作奨励金を払って実質的に減反政策を継続し、国民に税負担と高い米という二重の負担をさせている」

これは事実です。下に添付しら記事をお読み頂くと意味がお判りいただけると思います。他人事だと思わないでください。生命の維持に直結している問題です。あまりの現実に驚かれることでしょう。

山下氏の主張と「スマート・テロワール」との違いは余剰水田の使い方にあります。山下氏は日本の米は品質が良いので、競争力をつければ充分輸出できるというものです。「スマート・テロワール」では、中山間の農地ではコストが下がらないので、里山を含めて、畑地と牧草地に転換して米以外の穀物栽培と畜産を振興するが良いと提案しています。山下氏も間違っていないと思いますので、この違いは調整できると考えています。米が日本からなくなることはあり得ないからです。


「日本農業を壊すのは自由貿易ではない」:『農業と経済』2018年4月号

https://cigs.canon/article/pdf/180308_yamashita.pdf

【平成農政を振り返る】減反廃止はフェイクニュース、令和で真の改革を

http://shinshumachidukuri.blogspot.com/2019/08/blog-post.html



🔹 水田転作における麦・大豆の営農実態 国際価格の約10倍の補助金!

下図は、東信地域内にある耕作グループの水田転作営農の実際のデータです。

お断り:シカゴ商品取引所の価格がありますが、アメリカ国の補助金が入っていません。その内容まで調べられませんでしたが、上掲のグラフ「主要国の農業補助率比較」から類推して約20%とすると8円ですが、作物によって違うでしょうから確かではありません。




大豆は、農水省の監督下にある「日本特産農産物協会」が行う入札で民間業者が買い取り市販します。現在の市中価格は250円〜300円/kg。300円/kgで買った人は、税金で負392円/kgを負担しているので、692円/kgの大豆を食べることになります。仮にアメリカの市中価格を60円/kgとすれば、11倍の価格ということになります。

麦も大豆も国は管理貿易を行っています。輸入品の場合、政府は40円で仕入れて223円で販売し、差額は利益になっています。このカラクリは冒頭にご紹介した「日本は世界第5位の農業大国」に詳しく載っています。


🔹 主要農作物の反収(たんしゅう:1反=10アール当の収穫)比較。なぜ、こんな少ないのでしょう?

農水省では、休耕田を使って転作政策を進めていますが、小さな水田に、大型機械で行うべきトウモロコシ、麦、大豆を作らせています。非常に非効率な耕作なのでコスト高となり、2018年度の補助金が3300億円にもなりました。水田は小さいです。零細すぎる農地ではコストは下がりません。更に、水田は湿気るので品質も収量も落ちます。

「グラフ8」を作成しているF A Oというのは、国際連合食糧農業機関( Food and Agriculture Organization of the United Nations)のこと。S T A Tは、statisstics=統計のことです。


「グラフ8」は米、そば、大豆、小麦の反収ですが、10年毎の棒グラフで、一番色の薄いのが60年前になります。いずれも最下位が日本です。何という惨めさでしょう。インターネットで「F A O 農産物の反収」で検索するとトマト、じゃがいもはじめたくさんのデータを見ることができます。真剣に考えましょう。




🔹 世界の食料は人口の増加以上に反収が上がり生産が増えています。

常識に反しますが、世界では食料が余っています。「じゃ、アフリカなどで問題になっている飢餓は何なの?」ですが、それは内紛や他国からの干渉によって行政の機能が麻痺していたり、輸送手段が無かったりするからです。まともな政府があって、手を差し伸べれば、世界は助けられるのだと思います。

「グラフ9」は、1961年を100とした指数で、人口と穀物生産量・他の変化を指数で表しています


下図は、反収と生産量が増え続け、一人当たりの収穫面積は減り続け、収穫面積は微増です。

日本ではこの現象は起こりませんでした。大きな問題です。別処で説明いたします。



◉まとめ

戦後の歴史は工業・輸出立国という戦後復興の政策の結果だと思います。「ジャパンアズNo1」などという成果も達成しました。農村はたくさんの人材・労働力を都市部と工業に供給し大きな役割を果たしたと思います。しかし、バブルの崩壊と共にその時代は終わりました。

昨今、世界で活躍している実業家やジャーナリストの皆さんが日本のバブル崩壊以来40年に及ぶ長期の衰退に大きな警鐘を鳴らしています。「このままでは日本は沈没する!」と。国連やO E C Dが発表する諸データはそれを証拠づけています。今こそ、未来に向かって思い切った改革をしなければならないことは明らかだと思います。


ソフトバンクの孫正義氏は、2019年8月27日のニューズウィーク日本語版で次のように語っています。

「日本の労働生産性は先進各国で最下位(日本生産性本部)となっており、世界競争力ランキングは30位と1997年以降では最低となっている(IMD)。平均賃金はOECD加盟35カ国中18位でしかなく、相対的貧困率は38カ国中27位、教育に対する公的支出のGDP比は43カ国中40位、年金の所得代替率は50カ国中41位、障害者への公的支出のGDP費は37カ国中32位、失業に対する公的支出のGDP比は34カ国中31位(いずれもOECD)など、これでもかというくらいひどい有様だ。」「日本はもはや後進国であると認める勇気を持とう」


食に関連して、過去半世紀の間にいろんな大きな転換点がありました。1960年には日米安全保障条約の改定があり、翌年、農業基本法が制定され、全国で農業構造改善事業(御牧ケ原総合開発、菅平ダムなど)が展開され、稲作中心の農政が推進されました。1980年代のプラザ合意で円高となり輸入品が大きく値下がりし、食品加工原料のほとんどが輸入原料にシフトし、ていきまし小麦、大豆、蕎麦などの生産離れが加速しました。農村は過疎と耕作放棄が進行し里山が荒れてしまいました。

一方、1970年からつい最近まで米余りから減反政策がとられ、農業の保護という大義名分とは裏腹に農業の衰退を招いてしまいました。結果として、食料安全保障を脅かすような主要作物の自給率の低下を招いてしまいました。

残念ながら、自民党とJAと農林議員族が進めてきた農政は誤ったとしか思えません。「グラフ6」にありますように、補助金だけはふんだんに使ってきましたが、一向に農業振興につながらなかった結果を見れば、思い切って政策を転換し、国民の血税の使い方を再検討するべきです。


大幅に足りない農産物があり、一方で余っている農地(休耕、転作、放棄)と里山があるのに、有効活用されていないということ、そして農地は環境の重要部分です。現在の農村構造は60年前の計画(農業基本法)で作られたままです。世界の農業事情も足元の事情も様変わりしています。全ての産業が様変わりしている状況下で日本の農業だけが変わらなくて良い筈がありません。


私たちは補助金が悪いと言いたいのではありません。現状悪化にしかなっていない現在の使い方を、真の農業と農村の振興に繋がる使い方に転換すべきと提案しています。


当NPOは、「スマート・テロワール・農村消滅論からの大転換」(松尾雅彦著学芸出版社)の考え方と指針に基づき、その方策を提言いたします。この提言は決して目新しいものではありません。世界の現実を素直に学び、郷土愛をもって、論理思考で地域振興を研究すれば、農地と山林しかない地方では、自ずとたどり着く当然の帰結です。「スマート・テロワール」などという理屈を知らなかった青年が取り組んでいたことが、「これこそスマート・テロワールだ」と言わしめた事実が証明しております。実証されています。


奇しくも新型コロナウィルス禍に見舞われ、否応なく従来のやり方の転換を迫られています。グローバリズムの行き過ぎを是正し、地域(テロワール)を蘇らせる方向に動いている今が絶好のチャンスだと思います。


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スマート・テロワール とは!

東信スマート・テロワール を実現するために!



 30年後の理想の姿 (荻原廣髙画)


周りを見回して、「このままで良い」と答えた方は皆無でした。

「スマート・テロワール」とは?

スマート=「賢い」「無駄のない」「洗練された」

テロワール= 地域の土壌や気候などの個性を生かした農産物や景観などが育む
      「特徴ある地域」(別処に「テロワール」とは、)

スマート・テロワール= 美しき豊穣の村 (松尾雅彦訳。いろんな訳があります。)


 
うまく日本語に訳せないために、
言葉は難しいですが、
やろうとしていることは、先進国では常識的なことです。

昭和の30年代、私たちの親たちが大変なご苦労をしてやって下さった農業構造改善事業を、今度は私たちがやる番がきました。
それぞれの地域の住民が一体となって進めなければできない事業です。

◉ 目ざす姿

上に掲げた絵「30年後の理想の姿」です。

『手前の平坦地は水田です。傾斜のゆるい中山間地は整備して大きな畑にします。

そこに続く傾斜のきつい中山間地と里山は放牧地にします。所々に農産物の加工場やレストランができて、女性の働き場になります。

「日本で最も美しい村」に登録して観光客を迎えます。

田んぼを潰すのか!と怒こらないでください。納得の理由を説明いたします。』


◉ スマート・テロワールの基本の考え方


一口で表現すれば、地域内循環経済構造の構築。構造改善が必要です。

「安いところから輸入すれば良い」という安易な考え(グローバリズム)を改める。表面的な経済性だけでなく、環境保全、食料とその安全の確保、健康管理、何よりも地域内循環構造(ローカリズム)にすることにより地域に生まれる経済効果(お金)が大きくなり、豊かになれます。このために下記6項目を推進します。

「地域内循環」については、下記ブログを参照してください。


「地域内循環]は、なぜ地域を豊かにするのか?

https://shinshumachidukuri.blogspot.com/2020/11/blog-post_30.html  



 図にすると、次のようになります。下に説明があります。


🔹  耕畜連携の推進

循環型食産業構造を作るためには、畑作(穀物)と畜産の振興と連携が入り口。
(畜糞肉類の90%、その餌となり人間の加工食品となるトウモロコシ、麦、大豆の80〜90%が輸入)


🔹  余剰水田の畑地転換と輪作の導入

穀物栽培は全て大型機械で行われます。日本の穀物が高いことは周知のことです。コストダウンのためには、中山間地の余剰水田や荒廃農地をゾーニング(集約)して大きな畑地に再整備する必要があります。そして、輪作を導入する。輪作は歴史的に証明されている畑作の基本です。病害虫を減らし、増収に役立ちます。


🔹 農工連携の推進

畑作農家と食品加工場の間では契約栽培、畜産農家と畜肉加工場の間では契約肥育とします。これは工場側が主導しなければなりません。契約によって、農家側は経営が安定します。その余力を増収と品質の向上に向けることにより工場側は省きが減少し、品質が向上します。畑作と畜産が増えれば、加工場が増え、女性の雇用が増えます。


🔹 工商連携、地消地産の推進

生産農家、加工場とスーパーや小売店、公共施設(学校、福祉施設など)、消費団体などが連携し消費を支える。地域住民は地元愛で消費を支え、楽しむ。

🔹  食と農のプラットフォームを創る

大学、県・市町村、企業などの食品関連機関や金融も含めて、プラットフォームを形成し、栽培技術開発、品種改良、マネジメント、マーケティング、人材育成など、食産業の諸問題の解決を行う。


🔹 スマート・テロワールの自給率目標

地域内自給率50%、移入(国内移動)20%、輸入30%。日本全国で自給率70%を目ざす。(松尾仮説)(先進国は皆農業国。自給率は80%〜200%)


🔹  美しい景観の実現

上記6項目が達成されれば、美しい景観が実現する筈です。トップページに掲載した油絵はそのイメージを表したものです。その景観の中で、住民と来訪者が美味しい自慢の料理を楽しむ光景を想像しましょう。


◉ ステキなモデルがありました。

北海道の楽農学園大学を卒業し、ニュージーランド、イタリア、スイスに楽農を学び、2017年に小布施町で創業された小布施牧場(代表取締役木下荒野)です。まだ小さいですが、すばらしいモデルです。日本の畜産に革命を起こせます。下記から詳細をどうぞ。

中小の畜産業は復活できる!

◉ 東信スマート・テロワール とは、

松尾雅彦さんは、「美しき豊穣の村」=スマート・テロワールの地域を小文「スマート・テロワールのすすめ」の中で、次のように提案しています。
近隣の地方都市を含めた人 口10万70万人の自給圏
東信地域は、上田と佐久広域行政圏からなり、地形的にも文化的にも歴史的にも繋がりが濃い地域で人口規模も約42万人と、松尾さんの提案にピッタリです。小さ過ぎれば循環が成り立ちませんし、大き過ぎれば物流も人心も交流が疎になります。
東信スマート・テロワールは、この東信地域を「スマート・テロワール」にしようという構想です。下記の図で示します。


◉ なぜ、このようなことをやろうとしているのか?

ご承知のように、日本の食料事情には、困った問題が多いのです。
米と野菜だけは問題ありませんが、米の次に食べている肉とパン・麺類のほとんどが輸入に頼っています。しかも、一方において、農地が有効活用されていません。小布施牧場の実例に見たように、食に関する私たちの固定観念を根本から見直す必要があります。
下記URLをお開きください。驚く現実があります。

日本の困った食の事情
https://shinshumachidukuri.blogspot.com/2020/11/blog-post_85.html

◉ 「地域」とは、川の流れのなかにできた、渦巻や水溜りのようなもの!


「地域をまわって考えたこと」(小熊英二著 東京書籍2019)の中に次のようにあります。

『地域社会とは、「ヒト・モノ・カネ」という川の流れのなかにできた、渦巻や水溜りのようなものだ。「なぜここに渦巻が無くなったのか」「どうしたらここに渦巻が作れるのか」といった問題は、全体の流れの変化を踏まえずに考えることはできない。地域社会とは、そこにいる人々の活動や社会関係の総体のことであって、そこに山や川があることではない。
・・・市区町村は行政や政治の単位であって、地域社会の単位ではない。地域社会と市区町村が一致している地域の方が好循環を作りやすい。逆に、地域としての自信を喪失し、住民が一体感を失っていると、その地域は他の地域の広域経済圏の周辺(一)部に変化していく。
・・・川の流れが変わってしまった以上、復興はありえない。創造しかない。

◉ 地域社会とは「東信スマート・テロワール」のことです。
 上田広域行政圏と佐久広域行政圏に「スマート・テロワール」を実現することが、 上記の文章にある「一致させること」であり、私たちの役割です。この運動を推進していくのが下記の要素を兼ね備えた市民だと思います。
 

自立性

大衆の一部としてではなく、個々人として自主独立の気概を持ちつつ、自律的に活動する。

公共性

自らが市民社会における主権者であることを自覚して、社会的な権利と義務を遂行するとともに、一般意思の実現のために行動する。

能動性

自ら積極的に社会へと働きかけ、状況参加する存在である。



◉ 当NPOの役割は、

東信スマート・テロワール構築のための推進役、産婆役です。
主人公は各地域の住民の皆さんです。

◉ 「スマート・テロワール」に関する情報

このブログの右サイドバーの目次にたくさんの情報が入っています。

下記は、特に「スマート・テロワール」のことを集めてあります。
https://shinshumachidukuri.blogspot.com/2020/07/blog-post_10.html

この中にある1、2、3、は是非お目通しください。


◉ 米作りに関する深刻な情報

「日本農業を壊すのは自由貿易ではない」:『農業と経済』2018年4月号

https://cigs.canon/article/pdf/180308_yamashita.pdf


【平成農政を振り返る】減反廃止はフェイクニュース、令和で真の改革を

http://shinshumachidukuri.blogspot.com/2019/08/blog-post.html




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