米の余剰、トウモロコシの欠乏、どういうこと?
農業技術通信社 昆吉則 2021年1月
わが国では毎年10万トンずつコメの消費が減っています。それに加えて新型コロナ禍でインバウンド需要がなったことで大幅に減少し、農水省は2019年7月から20年6月までの主食用米の需要実績を714万トンだったと報告しており、やがて700万トンを切るレベルになるでしょう。それにもかかわらずお米の生産過剰が続き、農業界ではコメ市況の低下を危惧して農水省もコメを主食用から飼料用に仕向ける転作に対して10a当たり最大10万5千円もの交付金を支給して主食用米あるいは水稲生産そのものを減らそうとしてきました。にもかかわらずコメの供給過剰は収まりません。
一方、2019年の日本のトウモロコシ輸入は約1,600万トン。我が国は世界最大のトウモロコシ輸入国であり、穀物としてのトウモロコシをほとんど生産していない世界でもまれな国です。輸入されたトウモロコシの7割程度は飼料として使われ、そのほか食品やコーンスターチの形でアルコール原料など様々な用途に使われています。我が国の食料自給率が低い理由はこのトウモロコシ輸入が理由です。農水省は苦肉の策として法外な交付金を付けてコメを飼料にするという飼料米政策を続けてきていますが、コメを飼料にする国は日本以外にはありません。なお、業界関係者によれば輸入されるトウモロコシの内約150万トンはNON-GMトウモロコシだと言われています。
こうした我が国の水田農業と飼料・畜産環境の中で、岩手県花巻市で3人の農家が水田転作としてNon−GMの子実トウモロコシ(穀物としてのトウモロコシ)を生産し、それを同じ花巻市内の養豚家が利用し、白金豚のブランドで精肉として市内の旅館やレストランに供給するだけでなく、自らレストランを経営しています。またその肉は全国の高級レストランだけでなく輸出までされています。もちろん糞尿は水田に還元されます。
昨年度の我が国での子実トウモロコシ生産は僅か500ha程度です。花巻の農家グループでも10数haに過ぎません。それでも花巻市での実践は松尾雅彦さんが提唱したスマート・テロワールの地消地産のサイクルそのものです。
(第2回スマート・テロワール協会オンライン講演会のために書かれた文章)
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