2014年12月6日土曜日

日本版スローシティ [著]久繁哲之介

地方創生の”まちづくり”にピッタリの考え方だと思います。
スローフードの運動を生み出したイタリアが新たなスロームーブメントを起こした。
BOOKasahi.com に掲載されていた表題の本の書評をコピー・掲載させて頂きました。

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[評者]広井良典(千葉大学教授)  [掲載]2008年06月22日   [ジャンル]人文 
表紙画像 著者:久繁哲之介  出版社:学陽書房 価格:¥ 2,700
ひさしげ・てつのすけ 民間都市開発推進機構都市研究センター研究員。  

■人と人がつながる都市の構築を探る

 日本を訪れた外国人に対するアンケートで、「日本に来て 不便に感じたこと」の1位が「街にベンチが少ないこと」だったのを以前見たことがある。確かに日本の都市、特に大都市は、いかにも“生産者中心”にできて いて「ファスト」そのものだ。加えて個々の建物が、周囲の環境を顧慮することなくばらばらに作られ互いに“孤立”している点を合わせると、日本の都市は 「ファスト&クローズド(速く、かつ閉じている)」と言わざるをえない。

 こうした現在の日本の都市のあり方とは異なる“もう一つの道”を、「ス ローシティ」という概念を基本にすえて追求しているのが本書である。スローシティとは、イタリアの四つの小都市が「スローフードの精神をまちづくりに適用 しよう」という理念のもと、1999年に始めた都市の姿だ。著者は、こうしたスローシティの考え方を、人々のライフスタイルや消費構造などを含めた視点か ら吟味し、また「サードプレイス」(自宅と職場以外の、都市の中での居場所)の概念を併せて重視しながら、日本におけるスローシティ実現の可能性を様々な 事例の分析を通じて議論している。

 たとえば、(1)中心市街地再生に関するコンパクトシティ論で有名な富山市と青森市を対比的に分析したり、 (2)いくつかの地方都市における経済の地域内循環を検証し地域再生のための戦略を吟味したりするなど、「スロー」のための方策と同時に地域経済の活性化 などを総合的に検討している点が興味深い。そして著者の議論は「コミュニティ」に収斂(しゅうれん)し、「開放型コミュニティ」の構築こそがスローシティ 実現のための必須条件であるとのメッセージに至る。

 持続可能な都市、創造都市など都市論は新たな賑(にぎ)わいを見せているが、スローシティは 高齢者なども過ごしやすい“福祉都市”ともいえる。日本において重要なのは、スローという方向とならび、挨拶(あいさつ)などを含めた人と人との「関係 性」の再構築にあるだろう。それが著者のいう「開放型コミュニティ」と重なっているように思われる。

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