2021年8月28日土曜日

なぜ、高校生に農・畜産業を説くのか?

 この文章は、2021年度の当NPO年度計画にある「東信地域内高等学校の生徒に大学或いは専門学校の農・畜産学部に進学することを奨める」方針に基づき、東信地域内21の高等学校に提案させて頂いた理由説明書です。ごく僅かな学校を除いて、好意的に受け止めて下さいました。

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なぜ、高校生に農・畜産業を説くのか?

 2015年から「東信スマートテロワール」(別紙で説明致します)構築の活動を始めました。目指すのは食産業の生産から流通、加工、サービスの循環型構造の構築による地域中核都市(上田市、佐久市、小諸市、東御市)を核とした農村地域の活性化であり、自給率の向上であり、豊かで美しい故郷の再興です。別名は地方創生です。このためには、農村の財産であり、食産業の基盤である農地と里山の使い方をはじめ食産業全般の再構築が必要です。

理由は、昭和時代に米優先の考えで構造改善された農地・営農構造が現在の国際化された食産業事情に対応できず、半世紀にわたり衰退を続けているからです。米と水田は余り、トウモロコシ、麦、大豆、畜肉の8090%は輸入に頼っています。結果、私たちの命の本である食料自給率は先進国の中で最低の38%(カロリーベース)です。食料安全保障は風前の灯火です。

難しいのは、農地・農業・里山への取り組みは個人ではごく限られたことしかできないことです。昭和時代に全国で行った農業構造改善事業のように地域単位の取り組みが必要なことです。

過去5年間、東信地域の公民館等23箇所で説明会を行い、住民の皆さんに改革への取り組みを訴えてきましたが、ほとんど関心をもって頂けませんでした。そして、なぜ、関心をもって頂けないかも判ってきました。

 大きな原因が解りました。悪い人は誰もいません。ただ、誰もこのことを口にしませんが、農業・酪農・畜産に対する「諦めのような空気」が農・畜産業の当事者にも行政にも議会にも漂っていることが判りました。佐久広域食肉流通センター(屠場)の閉鎖決定問題など、このことを証明しています。8年も前に佐久広域議会で、「民間に移転する。ダメなら閉鎖」の方針が決まり、以来ホームページにその改革案が堂々と掲載されていたにも関わらず、赤字補填をしていただけで、関係者が前向きな対策を打たなかったのです。畜産業者も行政もJAも「この問題は誰がやってもうまくいかない。廃止やむなし。畜産消滅も仕方なし」という「空気」です。このことは農業全般にも言えます。これでは地域の農・畜産業の衰退は避けられません。

循環型農畜産業が大切だということは、国連のSDGsにも謳われ、今や常識だと思います。実は、量で米の2倍以上食べている畜肉の飼育が環境循環型農業の要です。私たちは、2015年に「スマート・テロワール 農村消滅論からの脱却論 」(学芸出版社)という本とその著者松尾雅彦氏(カルビー株式会社二代目社長。世界の農業を研究)に会う機会を頂き、上述の「空気」は間違いであり、改革しなければならないことを教わりました。そして、研究会や視察に参加し、日本の各地で、長野県にも、モデル的な農業・畜産経営が行われていることを知りました。実現していたのは専門知識を身につけ世界の農業を経験、或いは意識した農業経営者でした。

私たちは「スマート・テロワール」の理想を、現役の農家の皆さん(専業と兼業)と共に取り組もうと活動してきましたが、先進的な農業経営との考え方のギャップが大きすぎることと、現実の経営が厳しい状況にある為にそれが無理であることが判かりました。

結果として、私たちは優秀な農業経営者を育てることが農業改革への近道だと考えるようになりました。そして、質の高い農業経営者を育てるには大学の農学部で勉学してもらい、モデル農場で実習し、海外体験も必要です。私たちは学生たちをサポートする仕組みも考えています。

 このために高校生に、日本と世界の農業の現実を知ってもらい、日本でも実現している確かな農業・畜産経営のモデルを紹介し、農・畜産業の必要性と大きな可能性を学んでもらい、夢をもって大学の農学部へ進学することを奨めたいのです。

認定NPO法人信州まちづくり研究会

代表理事 安江高亮

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